2特集
SDGs AICHI EXPO 2023にて、「三重大学 ブルーカーボンの取り組み」の特別講演
- 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 13 気候変動に具体的な対策を
- 14 海の豊かさを守ろう
- 17 パートナーシップで目標を達成しよう
Aichi Sky Expoで行われたSDGs AICHI EXPO 2023で、「三重大学 ブルーカーボンの取り組み」の特別講演を行いました。
本学は、ムーンショット型研究開発制度 目標4「機能改良による高速CO₂固定大型藻類の創出その利活用技術の開発」の採択(研究期間2022.10~2025.3)を受けて研究をしています。
ムーンショット目標4で新たに実現する資源循環の例として「2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」があります。
地球環境再生のために、持続可能な資源循環の実現による地球温暖化問題の解決(COOL Earth)と環境汚染問題の解決(Clean Earth)を目指しています。
COOL Earthは、2030年までに温室効果ガスに対する循環技術を開発し、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点からも有効であることをパイロット規模で確認します。
Clean Earthは、2030年までに 環境汚染物質を有益な資源に変換もしくは無害化する技術を開発しパイロット規模または試作品レベルで有効であることを確認します。
柴田先生のブルーカーボンの研究は、「Direct Air Capture:自然プロセスの人為的加速(大気中に拡散したCO2を直接回収)」を目指す研究です。
ブルーカーボンとは、海洋生態系に吸収・固定(貯留)される炭素を指す言葉ですが、2009年に公表された国連環境計画(UNEP)の報告書「Blue Carbon」において定義では、「沿岸・海洋生態系に取り込まれ、そのバイオマスやその下の土壌に蓄積される炭素のこと」を指します。CO2の吸収源対策の新しい選択肢として世界的に注目が集まるようになりました。
亜熱帯の海岸に生息するマングローブ林(根茎葉)や、アマモなどの海の草と書く海草(かいそう)は、陸上植物と同じで根、茎、葉と機能が分かれています。一方、紅藻類、緑藻類、褐藻類に分類される大型藻類は、海の藻と書く海藻(かいそう)で、根、茎、葉のように見えるのですが、陸上植物や海草のように根、茎、葉といった役割がないという植物的な違いがあります。本学の研究では一番大きく成長して、かつ、資源量が多い大型藻類の褐藻類を研究対象としています。
陸上の植物の生産には、日光、CO2、淡水、陸地、肥料、農薬などが条件として必要になりますが、大型藻類の生産条件は、日光、CO2、海水があれば生育します。
大型藻類の一生を見ると、海藻バイオマスの10%は未分解の状態で海底に堆積しますが、残りの90%は手付かずの状態でバクテリアなどによって分解され、CO2と水と栄養塩に戻ってしまいます。この未利用の資源となっている海藻の90%を回収して、ものづくりに利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO2回収・利用)技術を開発する研究を行っています。
現在、四日市港での海藻養殖の実証試験を行っています。これまでに実績のあるクロメの養殖は、年間1haあたり乾燥重量で30tの生産が可能です。
四日市港の港湾区域面積は6,600haの約1/3に相当する2,200haの海域で仮にクロメ養殖を行った場合、現行の海藻養殖技術を導入すると、年間7万2,600tのCO2を固定したことになりますが、ムーンショット型研究開発事業による海藻養殖の技術革新を行うと年間36万3,000tのCO2を固定できる試算です。
海藻養殖した海藻は、バイオエタノールや持続可能な航空燃料のSAF(Sustainable Aviation Fuel)など、次世代の資源や燃料を効率的に生成する研究に繋げています。
柴田先生の研究内容は、「環境・SDGs報告書2023」の環境・SDGs研究の内容として、【大型藻類からのバイオものづくり】のテーマで紹介をしています。
詳しくは、こちらからご覧ください。