6環境・SDGs研究
リモートセンシングによる地域環境の解析
- 12 つくる責任つかう責任
- 15 陸の豊かさも守ろう
- 17 パートナーシップで目標を達成しよう
<工学研究科 情報工学専攻>松岡 真如(准教授)
地球環境や地域環境の変化は、さまざまな空間的・時間的スケールをもつため、広い範囲を継続的に観測する必要があります。そのような観測に、人工衛星を用いたリモートセンシングが利用されています。日本も「ひまわり」「だいち」「しきさい」「いぶき」など、いろいろな人工衛星を運用して環境に関する多様なデータを取得しています。
私たちの研究室では、そのようなリモートセンシングのデータを、地域環境の理解や改善に役立てるための研究をしています。例えば図1(a)は、森林を観測した衛星データでスギとヒノキを判別した例です。これにより、木材資源の現存量や変化を広域で知ることができます。また、図1(b)は衛星データから竹林を抽出した例です。西日本を中心に放置竹林の拡大が問題となっていますが、その対策に利用することができます。
図2は水田における稲の成長をドローンと人工衛星で計測した結果です。ドローンのデータは衛星で稲の成長を計測するための正解データとして使用しました。ドローンの観測結果に合うように、衛星データの解析パラメータを調整します。人工衛星のデータから精度のよい情報を得るには、地上観測データとの比較が不可欠となっています。人工衛星は長期間にわたって定期的にデータを取得することができるため、このような計測を続けることで、地球温暖化や異常気象の影響を明らかにすることができます。
リモートセンシングを用いた研究とSDGsとの関係について考えてみます。リモートセンシングの応用は多岐にわたるため、「13. 気候変動に具体的な対策を」「14. 海の豊かさを守ろう」「15. 陸の豊かさも守ろう」など、多くのゴールと関係があります。その中で私が注目しているのは、ゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」です。ゴール17には、ターゲット17.18として以下が設定されています(少々長いですが、全文引用します)「2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる」。人工衛星の観測データは、世界で共通の、客観的な、非集計型のデータです。比較的タイムリーに使うことができ、また、過去のデータも利用することができます。近年では、無料で使えるデータも増えています。このようなデータは、地球環境を考えながら地域環境を変えていくために重要な役割を果たします。私たちの研究室でも、リモートセンシングで有益な情報を取得するために、機械学習などを用いたさまざまな研究を行っています。