6環境・SDGs研究
更新不要の非常食としての食用カンナの有用性
- 1 貧困をなくそう
- 2 飢餓をゼロ
- 12 つくる責任つかう責任
- 13 気候変動に具体的な対策を
- 17 パートナーシップで目標を達成しよう
<環境ISO学生委員会 緑化班>石井 優至(班長)
本学のある東海地方では、近い将来に起こると言われている東海地震、東南海・南海地震の対策が行われています。一般の非常食には消費期限、賞味期限があり、備蓄食品更新によって経費の増大、食品ロスにもつながります。食用カンナ(Canna edulis)とは、ショウガ目カンナ科に属し、根茎を食用にする種類のカンナのことです(図1、2)。ジャガイモ(Solanum tuberosum)のように、種いもの周りに地下茎を作り成長していきます。味はジャガイモに近く、塩茹でして食べることができます。肥料を与えなくても大きく成長し、長期間の保存も利きます。加えて、霜が降りても地下茎に届かなければ、越冬させることもできます。三重県では食用カンナは越冬可能で、放置しておいても翌年再生し、成長します。また、植え替えた後に施肥すれば、収量は高くなります。生育時期により異なりますが、芋(地下茎)は大きくても小さくても、それなりに食糧となります。つまり、種いもを1度植えることで、費用をかけず継続的に栽培することが可能となります。そのため、自動更新の非常食として有用であるとして期待されています。
ここで、施肥しない場合である程度の収量が見込めるならば、施肥した場合で可食部の収穫量にどの程度の差が生じるか明らかにすること、および非常食として無施肥で維持できるかの可能性をみることを目的に調査しました。栽培区画6m×6mの畑のうち3m×6mのみ、N:P2O5:K2O=10:10:10の肥料を900g施肥しました。株間50cm、畝間1mで5月2日に植え11月26日に収穫しました。種いもとした食用カンナは1個あたり約60gでした。収量を比較する対象は、施肥区と無施肥区から地上部の生育中庸な6株ずつを選び調査しました。また、地上部の茎および根はカットし、地下茎のみの質量を計量しました。
計量した質量をShapiro-Wilk検定した結果、有意水準5%以上で正規性が認められました。さらに、対応がないものとしてLeveneの等分散性の検定を実施した結果、有意確率はp=0.034 <0.05で不等分散だったため、Welchのt検定を実施しました。その結果、施肥、無施肥の間では有意水準5%以上(t=2.431、p=0.052>0.05)で有意差は確認されませんでした。棒グラフは可食部収量の平均値、エラーバーは標準誤差を示しています。
食用作物のうち、イネ(Oryza sativa)、コムギ(Triticum aestivum)、トウモロコシ(Zea mays)などの穀類、ダイズ(Glycine max)、リョクトウ(Vigna radiata)などのマメ類に比べて、イモ類の研究や育種は進んでいません。そのため、株間に生育のばらつきがあるのが現状です。今回は実験規模が小さく、統計的に有意とはなりませんでした。しかし、施肥区は無施肥区より平均で約1.86倍収量が多く、施肥の効果は大きいと考えられます。一方、無施肥でもかなりの収量が得られたことを考えると、庭や花壇に数株植えておけば、手間や費用をかけずとも、いざというときの非常食となり得ます。
図1 食用カンナの地上部(R5.9.24)
図2 食用カンナの地下茎(R5.11.28)
参加メンバー:石井 優至、三宅 航暉、小崎 敬太、白代 奈々子、毛戸 あかり、恒川 哲瑛