環境ラウンドテーブル・ディスカッション(ダイバーシティの視点から考える環境とSDGs)

  • 4 質の高い教育をみんなに
  • 5 ジェンダー平等を実現しよう
森脇

日本では持続可能な社会について、主に自然環境や地球環境の問題への取り組みとして理解されがちですが、社会環境へのアプローチも必要です。持続可能な社会を実現するためには、現役世代やリタイア世代だけでなく、次世代やその次々世代に向けて社会環境を整えることが必要です。SDGsの理念である「誰一人取り残さない社会」を実現するためにはダイバーシティの尊重が不可欠であり、ダイバーシティはSDGsの前提であると理解されています。社会における多様性の認識が重要であり、ダイバーシティとインクルージョンは、多様性を互いに認め合い、受け入れ、生かすことが求められます。SDGsの中でダイバーシティと強くかかわっている項目の一つとして、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられています。日本の教育分野において、特に理工系を専攻する女子学生が非常に少ないという課題があります。ジェンダーギャップは日常風景の一部となっており、特に理工系学部では教員も学生も男性が多い状況が続いています。積極的な登用や活用といったポジティブアクションが有効な方法の一つだと考えられます。ダイバーシティ・インクルージョンの推進は、社会的平等や公正の達成、SDGsの目標達成のために必要です。多様な人材を受け入れることで創造性が高まり、多様なニーズに対応できるため、ダイバーシティ・インクルージョンの推進は今後の社会にとって有利な戦略であると考えられます。

金子

森脇先生の話では、大学を含めたダイバーシティの取り組みについて触れています。学生の皆さんは、ダイバーシティについてどのような印象を持っていますか。

口田

近年、ジェンダーや障害者に関する差別が意識されるようになってきましたが、日常生活ではあまり感じることはありません。しかし、インターネット上ではジェンダー差別や障害者差別の発言が多く見られ、多くの人が差別意識を持っている可能性があると感じています。

森脇

近年、あからさまな差別は減少しているものの、雰囲気や偏った構成が原因で力を発揮しにくい状況が依然として存在します。昔は女性が理屈を述べると「うるさい」と見なされることが多かったです。このような明確ではない差別は依然として存在し、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が特に若い世代に影響を与える可能性があります。日本では理系分野に進む女性が少ないという傾向があり、これは東アジア全体の特徴かもしれませんが、東ヨーロッパでは多くの女性が医学部や理学部に進学しています。日本は国際比較で見ると、多様な分野での活躍が十分に進んでいない現状があり、数字的なデータもそれを示しています。無意識の偏見が今後の課題とされています。

村松

生物資源学部では男女が半々であり、表面的な男女の違いを感じたことがないため、理系の話で男女の違いが強調されることに驚いています。ワンダーフォーゲル部では女子が少ないのは、男女の力の差が影響していると感じていますが、私たちの部では力の強い男性が力の弱いメンバーに合わせてくれるため、全員が同じ立場で活動できています。このように、力の差を理解し、協力し合うことが大切だと感じています。

金子

学生から見た今後のダイバーシティの重要性について、環境の多様性も含めて感じることを教えてください。

大森

私は化学を専攻しており、女性が多いというイメージがありますが、機械や電気電子の分野では女性がほとんどいないため、「男っぽい」というイメージが染み付いていると感じます。研究室には留学生もおり、彼らとの交流が楽しく、英語の勉強のモチベーションにもなっています。多様性によって自分自身も成長していると感じています。

金子

スリランカなどの国々における理系分野のダイバーシティや男女の学びについて、海外の状況はどのようになっていますか。

ドーナ

学生時代、人文系の学部では女性が圧倒的に多く、男性は非常に少なかったです。一方、経営や工学部では男性が多い状況でした。卒業後、教える立場になった時には、ビジネスや観光学などの分野で男女比が平等になっていると感じましたが、人文系では依然として男性が少ない状況が続いています。

森脇

日本では、文系大学院の学位を持つ女性の数が非常に少ないという問題があります。特に女性の大学院進学率が低いことが一因となっており、教員や研究者としてのキャリアにおいてネックとなっています。一方で、生物資源や化学の学部では女子学生の増加が見られ、これはよい傾向です。将来のビジョンを考える際に、研究を追求したいと思った時にその環境が整っていることが望ましいです。

金子

最近、企業が女性の院生を積極的に採用するようになり、研究室でも女性の院生が増加しています。この変化により、研究室や企業の環境も変わりつつあります。工学部ではまだ女性の院生は少ないですが、今後の展望について何か意見はありますか。

高木

若い世代では性別や国籍の区別が少なくなっていると感じています。私たちの世代やそれ以上の世代がいなくなることでダイバーシティという考えが不要になるかもしれません。工学部での女子枠を設けるポジティブアクションは、現在の不均衡を是正するための一時的な不平等措置であり、将来的な平等を目指す取り組みです。情報工学分野では男性が多く、特にコンピューターを作る仕事でも同様です。女性がもっとこの分野に来るためには、どのような対策が必要か考えています。

伊藤

工学部で女子学生が少ない理由の一つとして、入試科目に物理が含まれていることが影響している可能性があります。物理を入試科目から外すと女子学生の入学が増える大学もあります。これは中学校や高校の教育が影響しており、物理が不得意というわけではなく、物理に対する環境やサポートが不足していることが原因かもしれません。この問題は大学だけでなく、初等中等教育の段階から解決する必要があります。

森脇

本学では、政府主導の理工チャレンジがまだ実現していない状況です。理工系の学生や中高生へのアプローチにおいて、バイアスが存在する可能性があります。特に物理学や数学の女性教師が少ないことが問題で、女性のロールモデルが不足していると感じています。大学教員の時間的制約もあり、対策の実現が難しい部分もありますが、何らかの対策が必要だと考えています。

伊藤

本学のダイバーシティ・インクルージョンに関する取り組みは、主に日本人の教職員の視点に基づいて進められており、学生の視点が十分に反映されていないことが課題です。特に女子学生の増加に関する取り組みは、学生自身の意見ではなく教職員の考えから来ています。また、外国人教員や学生の視点も考慮する必要があり、例えばイスラム教徒の食事に関する配慮など、インターナショナルな視点からのダイバーシティ・インクルージョンも重要です。これらの視点を取り入れて、ダイバーシティ・インクルージョンの取り組みをバージョンアップしたいと考えています。

森脇

本学の環境について、大学院生や学部生は、研究や生活の中で考えることが多いと思います。また、生協でイスラム教に対応したサービスがあるのかも気になります。

大森

本学主催のイベントを通じて、幼稚園児から高校生までの子供たちに理系分野の体験を提供することで、理科や数学に対する興味を引き出し、将来的に理系を志す学生を増やすことができると考えています。

村松

高校時代、女子校で女性の先生が多かったため、男性の先生が多いという話に驚きました。特に化学を教える女性の先生を尊敬しており、自分も高校の教職課程を取っているので、その点でも驚きました。物理を選択する生徒は少なかったです。理由は分かりませんが、中学校や小学校の教育が影響しているかもしれません。

金子

本学におけるダイバーシティは、外国人教員や留学生の存在によって大いに促進されています。国際交流や多様性に関して何か考えはありますか。

ドーナ

日本での生活において、男女平等よりも外国人としての扱いを強く感じています。留学生は世界的に有名な国を選ぶ傾向があり、日本を選ぶ人は英語を母国語としない人が多いと感じます。卒業後、英語を母国語としない人々との協力についての意識が不十分であると感じています。多言語が存在する中でなぜ英語に焦点を当てるのか疑問に思っています。

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