6環境・SDGs研究
流域圏SDGs評価モデルの構築
- 4 質の高い教育をみんなに
- 6 安全な水とトイレを世界中に
- 8 働きがいも経済成長も
- 11 住み続けられるまちづくりを
- 13 気候変動に具体的な対策を
- 14 海の豊かさを守ろう
- 15 陸の豊かさも守ろう
- 17 パートナーシップで目標を達成しよう
〈地域イノベーション学研究科〉水木 千春 (准教授)
〈地域イノベーション学研究科〉朴 恵淑 (特任教授・特命副学長;環境・SDGs)
国連が2016年から2030年までにその達成をめざして掲げた持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)は、グローバルとローカルの両側面からの取り組みが求められています。日本国内では、環境省が地域レベルで循環型社会を実現(地域循環共生圏)するための「ローカルSDGs」概念を提示し、地域におけるSDGs活動を促進していますが、その方法論は開発途上といえます。
筆者らは、ローカルSDGs推進のための方法論を検討する際の課題として、自然環境を基盤とした地域設定が存在しないことやSDGsの達成度を計測する232のグローバル指標には定義や認識についての基準設定がなされていないものが多いこと、また、行政機関や企業、市民・市民団体などがSDGs活動の成果や達成度を当事者として認識しづらいことなどが挙げられると考えています。
現代では多くの社会基盤が行政区単位で構築されていますが、その行政区の境界線が自然環境の一体性を分断してしまい、地域のさまざまな課題に適切な対応ができない場合があります。しかし、歴史的にみても日本人の生活基盤は分水嶺に囲まれた流域でおもに形成されており、今日でも多彩な文化の集積が流域単位で見られます。そういった理由から、ローカルSDGsを推進する「地域」を三重県内の6つの主要河川である宮川、櫛田川、雲出川、鈴鹿川、海蔵川、員弁川の流域圏単位で設定しました。また、図1に示すように、その流域内に位置する自治体を「流域圏自治体」と位置づけ、それぞれ6つの流域圏自治体のSDGs指標を分析・評価することでローカルSDGs指標モデルについての検討を行いました。
図1 流域圏自治体
図2 二酸化炭素排出量(年間,1人あたり)
それらの結果、全部で102の指標を用いて、流域圏のSDGs達成度を地理情報として可視化するとともに評価が可能なデータベースを構築しました。表1に挙げたローカルSDGs指標の中から、産業界が関係する課題「二酸化炭素排出量(年間、1人あたり)」についての分析をみてみると、員弁川や海蔵川流域圏自治体などで数値が17トンを越えており、第2次産業の影響が大きい地域で排出量が多い傾向にあることが分かります(図2)。
こういったデータを援用すれば、流域圏という単位の中に立地する企業同士が二酸化炭素削減のために情報共有することや連携することを促すことも可能でしょう。
今後さらに、三重県だけでなく愛知県や岐阜県を含む伊勢・三河湾流域圏全域で、さらなるローカル指標の質の向上のための検討を進め、流域圏SDGs評価モデル完成に取り組んでいきたいと考えています。
参考文献
- 水木 千春、朴 恵淑、福井 弘道、古澤 礼太、川村 真也、第3章 流域圏SDGs評価モデル~三重県の流域圏、朴 恵淑、矢野 竹男(編)『持続可能な三重創生とSDGs経営』、風媒社、2021年