7環境関連の取り組みと評価
自治体の生物多様性保全施策への貢献
- 14 海の豊かさを守ろう
- 15 陸の豊かさも守ろう
- 17 パートナーシップで目標を達成しよう
〈教育学部〉平山 大輔(教授)
現在、生物多様性は世界中で急速に失われています。令和元年5月に、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)は、人間活動により約100万種の動植物が絶滅の危機に瀕しており、現在の絶滅速度は過去1000万年間の平均に比べて10倍から100倍以上高くなっているとの報告書を公表しました。この生物多様性の減少は、単に地球上に生息する生物の種数が少なくなるということに留まらない、極めて重大な問題を孕んでいます。なぜなら、生物多様性は人間生活にさまざまな利益をもたらしており、私たちの生命や暮らしは生物多様性によって支えられているからです。生物多様性の保全は、人間社会の未来に大きくかかわっていると言えるのです。
平成22年に名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において、生物多様性の損失を止めるための具体的な行動目標として愛知目標(愛知ターゲット)が定められました。これを受けて国内では平成24年に、愛知目標等を反映した「生物多様性国家戦略2012-2020:豊かな自然共生社会の実現に向けたロードマップ」が策定されましたが、それ以降の10年間、生物多様性についての社会の理解は進みませんでした。内閣府による調査(「環境問題に関する世論調査(内閣府)」)でも、COP10の際に一時的に高まった生物多様性の認知度がその後低下したことが示されています。
生物多様性についての理解がなかなか進まない、この社会の現状を地域から変えていくために、最近では、独自の生物多様性地域戦略を策定する自治体が増えてきています。三重県では、令和2年3月に、県のそれまでの地域戦略を改訂した「みえ生物多様性推進プラン(第3期)」が策定されました。計画期間は、令和2年度から令和5年度までの4年間です。策定の要点は、次の4つです。
- SDGs等、生物多様性を取り巻く社会状況の変化を踏まえ、積極的に生物多様性保全の環境づくりを行う。
- 開発と自然環境の調和を図るため、生物多様性の保全上重要な地域について明確化(ゾーニング)する。
- 生物が暮らす生態系どうしのつながりを重視し、生態系ネットワークの形成を促進する。
- 県民の生物多様性に対する意識を向上するとともに、効果的な生物多様性保全のために、さまざまな主体(県民、事業者、行政など)が取り組むべき内容を定める。
この「みえ生物多様性推進プラン(第3期)」の策定のための県の委員会には、本学の複数の教員も委員として携わり、生物多様性にかかわる専門家として貢献しました。
本学には、生物多様性に関する研究を行っている教員が多数所属しています。そうした教員の多くが、自身の研究の一方で、上記の生物多様性地域戦略のほかにもさまざまにある、自治体の生物多様性保全施策に積極的に携わっています。このような地域社会への貢献は、これからますます重要になると考えています。