看護師の思考の可視化の臨床応用への取り組み

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

<医学系研究科 看護学専攻>竹内 佐智恵(教授)

 人の営みのなかで常にそばにあるのは「環境」と言えます。目を転じて、人が病気治療のために入院することになるとその人が病院において、「治療や療養に関わる看護師がその人の安全、安楽を目指して関わる」ことが環境の一つとなります。ここでは看護師がいかにして、患者への安全、安楽なケアの質を維持するかについての研究・教育について紹介します。

患者を理解しようとする取り組み

 人が患者という治療を受ける状況になっても、日常を営む本質は維持されます。その人が生活の場を病院に移して、自身の健康、時には命の維持増進を図るために営みを続けることの支援において看護師はその人について「そのような病気でどのような治療をするのか」はもちろんのこと「何を大切に感じているのか」「自分自身をどのように位置づけているのか」「どのようなストレスを抱え、どのように対処する傾向があるのか」「どのような役割をもっているのか」なども含めて理解することに努めます。多くの病院では、こうしたことの枠組みを用いて情報収集します。「ゴードンの機能的健康パターン」(表1)は枠組みの1つです。

表1 ゴードンの機能的健康パターンの枠組み

患者と共に課題を共有する取り組み

 医療の考え方の一つには、収集した情報を基に、「現在、この人の健康状態を阻害している疾患は何なのか」を特定し、症状の消失や緩和のために必要な治療を決定するものがあります。さらに、看護師はこれらの情報を基に「この人にも治療や療養に主体的に参画してもらえるようにするために、どのように関わればよいか」「この人が、治療中のみならず退院後にも安定した生活をするために、どのような他者/どのような役割の調整をする必要があるのか」といことにも考えを向けます。いずれの考えも、得た情報の関連性を見出しながら診断や課題を絞り込むという思考が重要となります。情報間の関連性を明らかにしたり、解釈をしたりする看護の考え方として「関連図」という思考法があります。関連図は、「患者情報を整理する図」ではなく、患者から、言葉や態度または症状や検査結果として表出された情報を、医療者の知識や経験を踏まえてつなぎ、そこから患者の現在を理解し、情報のつながりから見えない課題や今後を推論する「臨床推論の可視化」を目指した図(図2)です。この図法は、多くの看護師が看護基礎教育課程で学び専門科目や臨地実習を通して実践して学んでいます。しかし多くの患者への対応を要する臨床では、看護師の思考に関連図の一端が存在していても、さらには、熟練した看護師が頭の中で『患者をつなげて考え、先を読む』という臨床推論を行っていても、それが可視化される機会は少なくなります。私たちは、こうした思考を可視化し、できるだけ迅速に的確な図に精製し、患者にとって優先的に関わる課題点や予防に取り組むべき推測事項を明らかにする仕組みを目指しています。

患者に関わる安全、安楽を踏まえた関りの質を維持する取り組み

 関連図は患者のケアに関わる看護師にとって、患者から得た情報(聴取、観察、気づき)が疾患のなかでどのような位置づけにあるものなのか、今後どのように症状が変化する可能性があるのかを見通せる指標となります。看護師間または多職種と共有することができれば、互いの解釈を説明し合う媒体となる可能性があります。また、患者と共有することができれば、患者自身の健康認識を高めたり治療への参画を促したりするきっかけになる可能性もあります。しかし、多くの情報を含み多数の矢印が交差する平面図では読み取りが困難であるという欠点を含みます。現在、これを動画化したりベッドサイドで確認したりできるシステムの開発を目指しています。

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