競泳レースの簡易評価システムの構築

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<地域イノベーション学研究科>水藤 弘吏(教授)

 競泳競技では、定められた距離を可能な限り短い時間で泳ぎ切ることが求められます。そのため、レースを評価する際には競技記録(タイム)のみに着目されることが少なくありません。しかし、結果として得られたタイムだけでは、選手が次の目標を具体的に設定したり、自身の課題を把握したりすることが難しい場合があります。特に、指導者(コーチ)が常に助言できる環境とは限らないため、選手自身がレースを振り返り、自分の強みや改善すべき点を把握することが競技力向上につながると考えます。

 競泳レースは、大きく4つの局面に分けて捉えることができます。スタートシグナルから15m地点までを「スタート局面」、ターン手前5m地点からターン後15m地点までを「ターン局面」、ゴールタッチ手前5m地点からゴールタッチまでを「フィニッシュ局面」、それ以外を「ストローク局面」と定義しています。レース全体をこれらの局面に分けて分析することで、単なる競技記録だけでは見えない特徴を把握することができます。

 これまで公益財団法人日本水泳連盟科学委員会では、国内主要大会を対象として長年にわたりレース分析を行ってきました。その結果として蓄積されたデータベースを活用し、競技力向上を目的としたレース局面時間の推定式が作成されています。この推定式を利用することで、目標とする競技記録に対して各局面で必要となる標準的な所要時間を知ることができます。選手は自身のレースと標準モデルを比較することで、どの局面が優れているのか、どの局面に改善の余地があるのかを把握することができます。

 従来、この推定式はExcelを用いた評価シート(図1)として利用されていましたが、より手軽に活用できるように、私はWebブラウザ上で利用可能なアプリケーションを開発しました(図2)。アプリケーションには競技記録や通過時間を入力するだけで、自動的にレース評価結果が表示される機能を備えています。現在の推定式は国内トップレベルの選手のデータを基に作成されているため、一部の競技レベルの選手を主な対象としています。今後はより幅広い競技レベルのデータを収集し、多様な選手に対応した推定式の構築を進めたいと考えています。さらに、年齢や競技歴なども考慮することができれば、ジュニア選手やマスターズ選手に対応した評価システムへ発展させることも期待できます。

図1 競技力向上のためのアプリケーション
https://swex.jp/info/related/
図2 泳力評価システムの入力画面
https://hsuito-cell.github.io/swimming-evaluation/

 アプリケーションの使用方法は簡単です。まず、性別、種目、目標とする競技記録を入力します。次に、レース映像やストップウォッチを用いて、各通過地点の経過時間を計測します。例えば50m自由形では、15m通過、25m通過、45m通過、そして50mゴール時点の時間を入力します。入力後に「評価する」をクリックすると、各局面の評価結果が表示されます(図3)。

図3 評価結果レポートの例

 図3の例では、女子50m自由形のレースデータを入力しています。50m種目はターンが存在しないため、ターン局面の評価は行われません。評価結果では、27.27秒で泳ぐためには、泳ぎ後半について「3」という評価であることから、標準モデルと同等であり、良好な結果が示されました。一方で、スタート局面、泳ぎ前半、フィニッシュ局面では目標値との間に改善の余地があることが確認されました。特に、泳ぎ前半の評価が「1」と低く、目標記録達成のためには前半局面の強化が重要であることが分かります。一方で、泳ぎ後半は、現在の強みであることも確認できます。

 競技記録そのものを向上させることは容易ではありません。しかし、このような評価システムによって具体的な課題を明確にすることで、選手は目的意識を持って練習に取り組むことができます。競技記録だけでなく、自身のレース内容を振り返り、良かった点や改善点を発見することは、質の高い練習と競技力向上につながります。本システムが、選手一人一人の目標達成を支援するツールとして活用されることを期待しています。

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