編集後記 三重大学環境報告書2019の作成にあたって

 三重大学はイギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education (THE)」が本年4月3日に発表した「THE大学インパクトランキング2019」のSDG12(つくる責任つかう責任)において,日本国内ランク1位,世界で31位を獲得しました。このランキングは2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な世界を実現するための17のゴール,SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の枠組みの中で大学の社会貢献度を評価するもので,世界から560大学が提出したデータを基に,今回初めて発表されました。国内ランク1位となった目標12は持続可能な生産と消費に関するもので,環境教育を通した人材の育成と研究の創形を目指している三重大学にとって,この受賞は大変名誉なことであります。さらに,いくつかのSDGsの各目標で本学は国内の上位にランクインされておりますので,詳しくは第2章の特集1をご参照ください。

 また,本学では平成28年度から,地域に多く腑存する環境価値を利用して地域の環境を保全し,地域の活性化を図る科学的地域環境人材(SciLets)育成事業を行っていますが,本事業が平成30年度に,「持続可能な社会づくり活動表彰 公益社団法人環境生活文化機構会長賞」および「第1回エコプロアワード 奨励賞」を受賞しました。これらにつきましてもSciLets育成事業を推進してまいりました本学にとって,大変嬉しい受賞と成りました。その他,「CAS-Net JAPAN サステイナブル 持続可能であるさま。特に,地球環境を保全しつつ持続が可能な産業や開発などについて言う。キャンパス賞」など,今回環境間関係の受賞がいくつかございました。これらの詳細につきましても第2章をご覧頂ければ幸いです。

 さて,今回お届けする環境報告書2019はフルバージョンをウェブ版とし,ダイジェスト版のみを印刷物としました。本学では以前より会議などにおけるペーパーレス化を進めており,さらに経費の削減および事務の業務改善を推進するため,学内で行われる全ての会議・委員会などの資料のペーパーレス化を宣言しました。このことは環境に配慮する上でも非常に重要であり,この環境報告書においてもペーパーレス化宣言に沿った形としました。それに加えて,本報告書のウェブでの公開により,一般の方にも広く見て頂けるものと思います。また,ウェブ版・ダイジェスト版ともに,各章の項目ごとに関連するSDGsのアイコンを付与しています。

 学生の環境活動は,本学の重要な取り組みの一つですが,第3章は環境ISO学生委員会が中心となって行っている「3R活動」,「緑化活動」,「広報活動」,「地域連携活動」などの報告です。「地域連携活動」は,平成18年度より年5回,地域住民の方々と共に行っているキャンパスに隣接する町屋海岸の清掃や北立誠小学校へ出向いて行った環境学習などです。また「3R活動」については,第2章に戻りますが,今年度の環境座談会のテーマを「三重大学の3R+を考える」とし,企業や自治体の方々をお招きして,最近では4Rとも言われる3R活動について多面的に話し合ったことを記録しています。

 第4章では省エネ積立金制度による附属病院熱源改修や学生・教職員の環境活動の見える化「MIEUポイント」について触れました。「三重大学省エネ積立金制度」は平成29年度から実施しており,附属病院の熱源改修事業に使われています。

 第5章は環境教育,そして第6章は環境研究の紹介で,そのどちらにも関わる重要なキーワードとしてSociety 5.0を取り上げています。第5期科学技術基本計画において提唱されたSociety 5.0は我が国が目指す未来社会の姿で,その実現のためにはAIやデータサイエンスなどを駆使した教育・研究が重要となってきます。また第5章では,環境・情報科学館の2階に設置した「体感型・体験型」機能のメイカースペースについても紹介しています。

 第7章の環境コミュニケーションではシンポジウムやセミナーについて報告しています。その中において,本学,タイのチェンマイ大学,中国の江蘇大学,そしてインドネシアのボゴール農科大学の4大学が順番に世話役を務めている「Tri-U 国際ジョイントセミーナ&シンポジウム」が今回第25回を迎えました。今回のテーマは「Population, Food, Energy, Environment to Sustainable Society」で,環境が大きなテーマの一つを占めました。

 第8章では本学が行っている環境関連の取り組み,第9章ではマネジメントシステムについて紹介しています。

 最後に,第9章で触れておりますが,三重大学は平成30年度に「三重大学環境方針」を見直し,「本学は国際的な動向であるSDGsやSociety 5.0を理解し,環境に関わる高い意識を持って,今後予想される大規模な社会変動に対応します。」という文言を追加しました。また,平成31年1月には国連・アカデミック・インパクト(United Nations Academic Impact: UNAI)に登録しました。持続可能な社会の構築のためには,環境問題の解決が必須であり,それに対して大学が果たす役割は非常に大きなものがあります。三重大学としても学生・教職員が一丸となって環境活動に取り組んでいくことが重要と考えます。

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