2特集
環境・SDGs座談会2021(SDGs活動)
- 4 質の高い教育をみんなに
- 7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 11 住み続けられるまちづくりを
- 12 つくる責任つかう責任
- 17 パートナーシップで目標を達成しよう
< SDGs活動の紹介(学生) >
- 朴
三重大学ESD-SDGsクラブの代表を務めている小西さんよろしくお願いいたします。
- 小西
三重大学ESD-SDGsクラブの活動内容を紹介させていただきます。クラブの特徴的なのはメンバーが、今日参加している水間さんや陶(TAO)さんなど、社会人学生や留学生が多いことです。環境に関連した研究内容を活かした持続可能な環境活動、SDGsとESD活動を積極的に行っています。私は教育を専門にしていますし、水間さんは社会資本の研究、陶(TAO)さんは四日市公害について研究をしているなど、多種多様な専門を持ったメンバーが参加しているのが良いところと思います。具体的な活動では地元企業のSDGsに関連した講演会や環境保全活動などを実施していることです。
また、2020年度の活動実績として、地域の貢献活動の研究では、2020年10月に開催された、「第12回地域イノベーション学国際ワークショップ」において、メンバーが最優秀論文賞、優秀論文賞を受賞しています。行政機関との連携では、三重県が主催しているサステイナブル委員会にも参加して、学生として、または、20代としての考え方を積極的に発信しています。企業の中部電力と自治体の川越町との環境エネルギー講演会や座談会などで意見交換をさせていただいています。今年度の活動として、7月に開催された太平洋・島サミットがオンラインで開催され、三重県のPR動画に出演させていただきました。
- 朴
三重県の産官学民との連携によるパートナーシップ事業を積極的に展開しているのですね。
- 小西
はい。「ミッションゼロ2050みえ」と言う三重県の脱炭素社会・カーボンニュートラル社会構築のための若者チームの一員としても参加さしていただいています。そのチームの活動として、大学生にSDGsの認知度をアンケート調査して、私たちが分析しました。朴先生の授業で、その結果や考察をレポートにまとめました。
- 朴
学生にSDGsアイデアを募集して見事、最優秀賞に選ばれた水間さんに、受賞したアイデアについて紹介していただきましょう。
- 水間
2030年のSDGsのアイデアということで、普段から考えていたことをアイデアにまとめましたので紹介いたします。大学ってこういった場所にしたいという考えでアイデアをまとめました。タイトルとしては「大学が育む地域の学びのネットワーク」です。 地域の住民全員が学べる場所。大学というと、学生のための学びの場です。ただ、地域の方も一緒に学びを高め合っていく場所になる必要があると考えました。ただ学ぶというだけでなく、ネットワークをつなげて、それから外に派生していく、そういった場所にもなって欲しいと考えました。大学は、「地域のやりたいことを実践できる場所」です。これはただ受動的に学ぶ場所ではなくて、例えば住民が、「解決したい事」、「自分はこういう知識を持っている」、「ノウハウは無いけど行動したいという気持ちがある」など、何か助けてあげる場所を提供する機能も大学にはあるのではと考えました。それを統括したワードとしては、大学を地域の総合的に学びの拠点にできればいいなと考えました。僕も社会人経験があるのですが、「三重大学は知ってるけれど、何やってるか分からないという」という思いもあり、狙いとしては、大学に先ずは親しみを持ってもらうと思いました。
取り組みをして得られる効果として、まず1つ目の効果は、大学と地域の相互の理解の深まりが得られると考えました。学生と教職員の大学側の方と地域の方が交流することで、お互い今まではあまり知らなかったけども、実は大学ってこういう場所だという理解していただき、相互の理解が深まる効果が得られると思っています。効果の2つ目に、地域に多様なネットワークができるとも考えています。効果の3つ目として、地域全体の学びが活性化する。大学で繋がった方が、新しくいろんな取り組みを立ち上げて、どんどん学びを深めて、どんどん派生的に広がる。三重大学を中心にして地域全体の学びが活性化すると考えました。こういったことが達成されれば、SDGs目標4の質の高い教育をみんなにの目標が達成できるのと思い、このアイデアを出しました。
- 朴
SDGsのアイデア募集で最優秀賞が水間さん、優秀賞が小西さんだったのですが、小西さん、アイデア内容を紹介してください。
- 小西
発言の機会をありがとうございます。学生が発言をする場として、今回のように座談会の場を設けて意見を交わす場を作った方が良いというアイデアを提言させていただきました。私の勉強不足もあるのですが、先生方がやってらっしゃる各部門の活動を僕も初めて知りました。例えば、環境インターンシップや、環境内部監査員の制度っていうのも初めて聞くお話でした。今回のような意見交換というのは非常に重要な場だと思いました。私たち学生も期間があって、4年ないし、僕は6年近く在籍していますが、この後、社会に出ていく上で、環境とSDGs先進大学を掲げている三重大学を卒業したことを誇って出ていきたいという思いもあるのですが、やっぱり今は、学生自身がそのことを認知できていないと思っています。例を挙げると、教室のクーラーが効いてないとか、トイレの便座が冷たいことの認識しかないことも間違いなくあります。シラバスの中でも環境目標が書いてあるのですが、何の目標なの?って知っている学生がどれだけいるのでしょうか。それだけ大学と学生との考え方の乖離というのは間違いなくあると思っています。今回、話をする機会を設けさせていただいて大変ありがたく思っていますが、より多くの学生に、継続的にやっていけたらいいなと私自身考えています。
- 伊藤
正直言って、環境とSDGsを三重大学で第4期においてどのように展開していくのかを検討し、さまざまなアイデアをいただいているのですが、学生の皆さんがいろんな活動を通じて実践できていることに感銘を受けています。大学は、教員の我々が学生さんに教えるという昔の古いイメージが実は僕たちにもあるのですけれども、みなさんの発表を聞かせていただいて、教える立場の我々も、学生さんたちもみんなで勉強しようという仕組みをつくることが大変重要であると思いました。これから皆さんが生きていく社会を、どう作っていくかということになるので、みなさんのアイデアとか、みなさんの活動を是非とも、受け身じゃなく、いわゆるアクティブにラーニングする、そういった取り組みを入れながら、環境とSDGsの取り組みを是非とも一緒に創っていきたいと強く思いました。
- 朴
ありがとうございます。伊藤学長は、優秀な三重大学生が地域に貢献できるような場がたくさんあって欲しいと常々おっしゃっておられますので、後に話を深めましょう。
- 朴
もう1人。中国からの留学生の陶(TAO)さん、お待たせいたしました。
- 陶
陶(TAO)タオ エイと申します。皆さんにたくさん伝えたいことがありまして、グローバル的な考えを伝えるツールとして、今回は英語でお話をさせていただきます。
私が、日本、特に三重大学へ留学を決めたのは、四日市公害について研究したいと思ったからです。私は、中国武漢の大学で、中国北東部の産業地域における公害問題を研究していました。朴教授は、この分野のトップであることから、朴教授に連絡を取りまして、三重大学に留学できました。多くの人は、四日市公害が50-60年前の出来事として捉え、「四日市公害は過去のことなのに、なぜ、学び続ける必要があるのでしょうか?」という質問をよく聞かれています。私は、日本が公害問題を克服した経験やノウハウを、中国やベトナム、タイ、その他のアジア諸国の環境問題の解決に活かす必要があると思っています。アジアや世界の環境協力をもっと呼びかけ、イニシアティブを取るべきであると思っています。国際環境協力においてSDGsは、有効なツールとなります。最近は、オーストラリアやアメリカ合衆国での山火事、ドイツの洪水や中国の集中豪雨、静岡県熱海での土砂崩れなどは、気候変動による影響です。私たちは、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議;イギリス・グラスゴー;2021年10月31日〜11月12日)へ参加し、世界の若者とのコミュニケーションを図り、持続可能な三重創生および三重大学の環境やSDGsのトップランナーとしての取り組みについて多いにアピールする予定です。
- 朴
陶(TAO)さんのお陰で国際的なカンファレンスになりましたね。それではSDGsに関して、もっとディスカッションをしましょう。小西さん、三重県と連携した活動を多く行っていますが、紹介をお願いします。
- 小西
私が三重県の方と一緒に取り組んだアンケート調査で、SDGsの言葉が徐々に広がっているのですが、実際に取り組みまでは至っていないという実態でした。僕の考えなのですが、世代間の差が感じられ、環境と言うとちょっと鬱陶しいって感じる節があると思います。環境に良いというと、ちょっとコストが高くなったり、課題があると思っています。例えば、机上にペットボトルが用意されていますが、例えば水筒を持ってくる。ただ、環境に良いから水筒を持とうじゃなくて、おしゃれな水筒、本当に個人が持ちたいと思われる水筒を作って、気づいたら、「これ環境に良いよね」っていう入り方がいいと思っています。CO2の削減に関しても、環境に良いというスタンスよりかは、「カッコいいよね」という雰囲気は間違いなく必要だと思います。カッコいいっていう入り方のブランドイメージは大事だと、皆さんのお話を聞いて感じました。
- 伊藤
無理してやっているよりは、継続的に実践するきっかけづくりが重要ですよね。
- 朴
ありがとうございました。少し補足説明をします。小西さんの意見にも出ましたが、今回、皆さんの机上にペットボトルが置かれております。昨年までの環境座談会では、ペットボトルの配付は行っていなかったのですが、しかしながら、今回はコロナ対策や熱中症対策を踏まえた環境配慮策として、皆さんにお配りしたペットボトルにつきましては、100%リサイクルの「ペットボトル to ペットボトル」を実施している、メーカーのブランドを選定していることを付け加えさせていただきます。
- 小西
熱中症対策として準備されたこと、また、100%リサイクルのことをよくわかりました。
- 朴
若い皆さんが、一緒に手を組んでやっていく事は、世間を変えることができる、大きなインパクトになると思います。1人は大変でも、1人が2人、2人が4人、4人が8人と増えてくると、必ず変革は起きると思います。どうでしょう、思い立った時に、この指とまれ!といった感じでコロナ禍をチャンスに変えませんか?学生の皆さんは、SNSも得意でしょうし、色んなことができるので仲間を増やして、それぞれの得意とするものを活かして、発想を変えて、新たなイノベーションを起こして、今日、ここにいる皆さんで、この場で、学生による「三重大学SDGsプラットフォーム」のような体制を結成したらどうでしょうか?
- 学生
はい、そうですね。そう言っていただけるなら、「三重大学SDGsプラットフォーム」をつくりましょう。
- 朴
「三重大学SDGsプラットフォーム」が、2021年7月28日午後3時10分、若い皆さんたちで結成できました。伊藤学長と今西理事・副学長もいらっしゃるので、次のステップとして、具体的にどういうことをやっていくのかを考えましょうか。
- 及川
それであれば、今、作られた「三重大学SDGsプラットフォーム」について考えます。SDGsアイデア募集で、皆さんが提案した内容は確かに僕もいいなと思っています。プラットフォームをせっかく立ち上げたのであれば、大学院生の方が中心になって、後輩と一緒に、具体的な研究を考えてみませんか。可能ならば、今年の「三重大学環境・SDGs報告書2021」に、環境研究として記事掲載の準備もします。報告書の読者対象として、高校生も想定していますので、是非とも原稿作成をお願いします。
まず、三重大学を見て、何が必要かを考えてみることです。そうすると一番重要なのは、何でこうやねん、何でこうなってんねんという疑問に持つことが必要であることに気づきます。その疑問に思ったことが、すぐに解決できる訳じゃないのですが、疑問に思わなかったら、何のアイデアも浮かべなくなります。とにかくアイデアをいっぱい出して、それが駄目でもいいので、三重大学の一人ひとりが一丸となって取り組む過程で、新しい知見や知識が身につき、実行力を発揮し、「環境とSDGs先進三重大学」が創造できると思います。
- 朴
陶(TAO)さんどうですか? 通っていた中国の大学は、マンモススクールですよね。それと三重大学の環境と、いろんな部分で相違がある点や、何か特徴的なことを感じたことがあれば教えてください。
- 陶
個人的な見解ですが、中国の大学は、日本の大学、三重大学より、足りないところがたくさんあります。2018年よりも以前の中国の大学は、環境とSDGsへの取り組みもなかったと思います。SDGsについて三重大学に来て、朴先生の講義を聞いてから初めて知りました。今回のディスカッションで、いろんな分野の先生と学生さんのアピールを聞いて、私はこれからいろんな活動やコミュニケーションを通じて、もっと学びたいと思いました。また、日本や三重県、三重大学をはじめ、日本の大学の先進的な環境とSDGsへの取り組みも中国の大学に伝えたいと思いました。
- 朴
予定していた2時間に迫ってきました。全体のディスカッションを終えて、今西理事に一言、最後に伊藤学長から一言をお願いします。
- 今西
今日は非常に面白い話を皆さんに聞かせていただき、ありがとうございました。非常に印象的だったのは、我々教員と学生では、ずいぶん視点が違うなぁって思いました。考えてみたら、皆さんは三重大学の学生なのですが、地域の住民的な要素もかなり持っていると思ったわけです。我々は、地域共創大学として、地域と一緒にやりましょうと考えているわけですが、「こんな近くに地域の人がいたんだ」と、学生の皆さんに意見を求める事は、非常に有効なことだった、そして、良いことだということを改めて認識しました。その点について、非常に感謝をしています。これから理事として環境に関する仕事をしていくにあたって、是非とも、皆さんの意見を取り入れながら進めていきたいと思います。
- 朴
伊藤学長、締めをお願いいたします。
- 伊藤
みなさんどうも今日はありがとうございました。繰り返しにはなりますが、大学は、教育、研究、社会連携という社会貢献を行うところなのですが、「主役は学生さん」と改めて思いました。皆さんと一緒に、我々教職員も学ぶという姿勢、これが非常に大事です。今日は、本当に我々も勉強させていただくことができた、環境とSDGsのテーマの座談会でして、非常に良かったと思います。また、楽しい三重大学を皆さんの意見と実際の協力をいただきながら創りましょう。是非とも「環境とSDGs先進三重大学!」を実現したいと思いますので、これからも皆さんのご協力をよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。
- 朴
ありがとうございます。教職員と学生が共に楽しみながら成長できる三重大学、産官学民のグローバルパートナーシップによる「環境とSDGs先進大学」のトップランナーである三重大学を目指して、オール三重で取り組む素晴らしさに気づき、決意を新たにする貴重な時間でありました。2時間があっという間に過ぎましたが、SDGsの大命題である「誰1人取り残さない」「大変革をもたらす」ため、皆さんからの有意義な意見をいただき、本当にありがとうございました。これをもって「三重大学環境・SDGs報告書2021」のハイライトとなる特集、「環境・SDGs座談会/ラウンドテーブル・ディスカッション」を終わらせていただきます。