三重大学 環境・SDGs報告書2021

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

環境・SDGs座談会2021(職員の環境活動)

  • 4 質の高い教育をみんなに
  • 7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

まずは、伊藤学長に環境とSDGsへの抱負をお願いいたします。

伊藤

環境とSDGs、特に、環境については、三重大学は、ずいぶん前から力を入れていて、環境への取り組みと実績は、日本に広く知られています。その環境に加えて、2030年までの全世界で目指す目標のSDGsに関しては、来年度から始まる第4期において、三重大学は、取り組みを充実させるための計画を立てています。環境とSDGsに対する教育と研究は、三重大学の大きな柱の1つにしていきたいと思っています。
4月に策定した環境・SDGs方針において、大学の基本理念と環境SDGs基本方針、そして、環境教育、環境研究、社会貢献、業務運営に対する取り組みを是非とも皆さんの力をもって、発展させてほしい、展開させてほしいと思います。今日は、そういったことを皆さんと一緒にディスカッションしたいと思います。大学には10,000人ぐらいの教職員と学生がいて、そのうち学生さんが7,000人ほどで約7割が学生さんです。学生さんたちの活動が、三重大学の活動であって、教育と研究に加えて、学生さん達と一緒に動いていくところが、我々の地域の大学としては非常に理想だと思っています。その活動の1つの良いモデルとして、この環境とSDGsに取り組んでいきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ありがとうございます。ちょっとだけ自慢話をさせてください。伊藤学長が制定して公表された国立大学法人三重大学環境・SDGs方針は、今日、皆様にお配りしておりますので、よく読んでいただきたいと思います。大学のSDGs方針として、世に公表しているのは、私が調べたところ三重大学のみです。伊藤学長がおっしゃったように、SDGsは、17の目標と169のターゲットからなる、2030年までに世界のすべての国、地域の政府や行政、企業、大学など、すべての組織、すべての人々が一緒にやって取り組むべく大命題なので、大学の運営方針の中で、SDGsを見聞きしているのはとても嬉しいことでもありますし、三重大学の教職員と学生がSDGsの達成を目指して、オール三重で取り組む目標なので、いろいろな分野ごとに話を聞かせて下さい。
三重大学が地方共創大学として、文部科学省、経済産業省、環境省と一緒に活動をしているカーボンニュートラルについて、2050年までに、二酸化炭素の排出の実質ゼロに向けた大学等のコアリションの取り組みについて、三重大学は、非常に重要な役割を担っていることを踏まえて、今西理事・副学長から話を聞かせていただきます。

今西

ご紹介していただいたように、最近の三重大学の対外的な活動の1つをご紹介します。カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリションについてですが、コアリションと言うのは連合や連盟の意味です。今年の春ごろ、文部科学省と環境省が発案し、経済産業省も加わった3つの省が指導する形で現在進行しています。カーボンニュートラルを達成するという目的に対して大学が果たす役割が非常に大きいです。大学は、研究と教育、地域貢献の機能を持っていますが、カーボンニュートラルを実現する上では、人材の育成、イノベーションなど、地域と共にその目標解決に取り組むことが必要ですが、大学は、そういう機能を既に備えた組織なので、三重大学はもちろん環境に力を入れていますから参加をすることになりました。現在コアリションには約100大学が参加しています。ワーキンググループが作られ、地域ゼロカーボン・ワーキンググループと人材育成・ワーキンググループの2つに三重大学が参加します。特に、人材育成・ワーキンググループでは、三重大学が幹事校になっています。明日(令和3年7月29日)、設立大会が開かれ、大学を挙げて本格的に取り組むこととなるので、学生の皆さんにもご協力してもらう部分がきっとあると思います。是非とも、これからよろしくお願いします。

2021年4月から新しい伊藤学長体制のスタートに伴い、国際環境教育研究センターは、5つの部門に改組しました。それぞれの部門で今議論をしていること、これからの取り組みについて聞かせていただきます。
まず、環境教育部門について高橋先生、よろしくお願いいたします。

高橋

「環境教育部門」は、学生と社会人の方にも環境教育の場を提供することを目的とした組織です。教養教育において、国際環境教育センター主催の授業を運営していますが、1番の目玉としているのが、環境インターンシップになります。インターンシップと言えば、学生にとっては就職活動を見据えた上で、社会理解のための活動だと思いますが、環境教育部門が提供している環境インターンシップは、就職活動ではなく、企業または社会、三重県の組織が環境に対するどのような取り組みを行っているかを実際に触れて学ぶための授業です。学生のインターンシップを受け入れてくださっている企業からも三重大学の評判は、大変良いものをいただいておりますし、参加した学生、受講生からも授業アンケートで、大変ためになったと嬉しい反応があります。今年、2度の部門会議を開催しましたが、三重大学が環境を第1の主題と考えている大学として、センター開講科目を見直す時期に合わせて、より良いプログラムづくりについて議論を進めています。

次は、環境研究部門の及川先生、よろしくお願いします。

及川

「環境研究部門」では、学内の環境の研究に関して取りまとめをしているのですが、今日参加をしている学生に伺います。研究は、自分で考えて、自分から動いて、自分で結果を出して、自分で何が起きたかを考察していくこととなります。ただ、国際環境教育研究センターが、どのような研究をしているのかと言われるとなかなか説明が難しくなりますが、各学部で行っている環境研究、各先生が行っている環境に関する研究を探っていく調査をしています。その結果から毎年発行する環境報告書に、環境研究という章立てにまとめて紹介しています。これは、2006年から続けて、これまで大体130を超えた研究を、環境報告書を介して世間に発表しています。特に、環境報告書のターゲットを高校生の方々にも分かるような内容で記事を作成して発表しています。三重大学に志望したいと高校生が思ってくれればいいと考えて、環境研究を報告しています。
前回の国際環境教育研究センター員会議(令和3年7月7日開催)でも発言しましたが、学生さんの活動報告が欲しいと希望しているので、今からでも学生さん、ぜひとも環境研究について記事を書いていただければと思っています。例えば、海岸での清掃活動ですが、ごみを拾うだけですか。

土井

拾ったごみは、津市の職員の方に依頼して回収していただいて終わりになっています。

及川

それはそれで重要なことなのですが、拾ったごみがどうなるのか、どんなごみが落ちているのか、海岸のごみは、海から来たものなのか陸から捨てられたものなのかなど、疑問を持って活動してほしいと思っています。それを委員会でまとめて、研究として発展できる活動にしてもらいたいですね。三重大学としても、学生と一緒になって行っている雰囲気も出せるので、ぜひとも学生さんに、一つひとつに疑問を持ち、目的を持って活動して、環境の研究へと発展していただきたいと思っています。

実は、ここに参加している学生のみならず、卒論やいろいろレポートを書いている学生もいるのです。学生の皆さんは、それぞれの活動をまとめ、研究レポートを作成し、是非とも、今年の「三重大学環境・SDGs報告書2021」に掲載できるようお願いします。
続いて、梅崎先生、環境ISO推進部門についてよろしくお願いいたします。

梅崎

「環境ISO推進部門」は、三重大学が環境ISO14001の認証取得を目指すという時の非常に早い段階から設立された部門です。部門には、教職員のすべての部局からの委員がメンバーとして加わっており、今年(令和3年度)は、特に人数を増やして18名のメンバーで構成されています。環境マネジメントシステムを円滑に機能させるために、EMS年間実施計画の作成と運用、部局や事務運用の支援を行うのと同時に、構成メンバーの教職員研修を通じて、環境マネジメントシステムを運用しています。
もう一つの役割は、環境ISO学生委員会活動の支援です。去年、今年とコロナ禍の影響でキャンパス内に立ち入ることが難しく、昨年は、新入会メンバーが非常に少なかったこともありました。学生の環境活動はとても重要で、例えば、学内の落ち葉ですが、10年以上前は、燃えるごみに出していたのですが、落ち葉堆肥化の活動が始まりました。
先ほど、環境教育や環境研究の中で、学生の自発的な環境研究の話が出ましたが、例えば、緑のカーテンが、温暖化防止策として効果があるのかどうかと疑問を持ち、緑のカーテンのオモテ面(光を受けている方)と、光を受けてない方での違い、植物の高さによってどう違うのかなどを測定し、調べる活動をサポートしました。
その他の特筆すべき活動として、環境教育部門と環境研究部門との連携活動のMIEUポイントがあります。MIEUポイントは、環境に良い活動へのインセンティブとして、環境活動や省エネ活動を実践した学生や教職員に対してポイントを付与して、そのポイントで大学生協においていろんなものと交換できる三重大学のオリジナルシステムです。社会のモデルとして広がっていけば、地域の環境活動につながると期待しています。MIEUポイントの財源は、地元の企業や三重大学生協の協力によって交換商品が提供できるシステムなので、地域と大学との連携による環境活動として、学内外で高い評価を受けています。
今年度から、実験廃液の処理を含めた環境保全機能も環境ISO推進部門に集約されました。三重大学から排出される廃液の処理、モニタリング、学外への環境負荷の制御に適切に対応することによって、三重大学の環境マネジメントシステムが、環境・SDGs先進大学としての活動が期待できます。

環境ISO推進のためには環境内部監査員を養成しなければならないので、環境内部監査責任者の石川先生、よろしくお願いします。

石川

「環境内部監査」というと、ちょっと堅苦しいイメージがあるのですが、三重大学が取り組んでいる環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の規格に合わせて構築しています。このシステムで重要なのは、計画を策定し、それを実行して、その実行状況をチェックして改善していく、PDCAサイクルを回していくことが重要です。このPDCAのCにあたるチェックが環境内部監査となります。環境内部監査は、環境内部監査員が行いますが、三重大学の特徴として、監査員に教職員と学生の皆さんが加わっていることが挙げられます。そのために、毎年環境内部監査委員の養成を行い、これまで延べ650人程度の監査員を養成しました。ただ、学生さんの卒業や教職員の異動、退職によって数が変動しまして、現在、約300名の監査委員がおります。監査員による監査チームを編成して、すべての部局を対象に監査を実施します。この内部監査がきちんと機能しているので、外部のISO14001の審査員による審査では、これまでに不適合の事象はなく、登録継続ができています。
今年(令和3年度)の8月末から9月初めにかけて、環境内部監査員養成研修を行う予定です。コロナ禍ということで、これまで行ってきた対面式監査ではなく、オンラインによって実施されるので、少し難しいところはありますが、工夫をして遠隔監査が行えるような対策を取っています。この環境内部監査は、三重大学の特徴でもありますので、学生の皆さんの積極的な参加をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

内部監査員養成は夏期集中講義で行っていましたが、今年も実施されますか?

石川

今年も集中講義で行います。学生には単位を付与できる授業として、4日間のプログラムの予定です。

学生は、履修することで2単位の取得はもちろんのこと、内部監査員にもなりますので、大勢の学生の参加を期待しております。

石川

毎年、年2回の集中講義を計画していますので、学生には履修申告をしていただきたいと思います。

次は、スマートキャンパス部門について、東部長によろしくお願いします。

「スマートキャンパス部門」では、三重大学に平成23年(2011年)から設置を開始し、平成26年(2014)年から稼働しているスマートキャンパスの施設設備群を事務局施設部と密に連携しながら管理運営して、CO2排出量とエネルギー使用量の削減を実現すると共に、スマートキャンパスで得られた成果を、地域や他大学等に紹介しています。三重大学のスマートキャンパスは、大学キャンパスや施設を活用して地球温暖化防止、自然共生と資源、エネルギー利用等の革新技術の実現化立証を方針にかかげ、この方針に基づいた省エネ設備技術を導入して、最適な創エネ、蓄エネ、省エネによりエネルギーの効率的な運用を掲げております。創エネとしての設備は、ガスコージェネレーション設備、風力発電設備、太陽光発電設備でエネルギーを作り、蓄エネとしては、蓄電池で電気エネルギーを貯めます。省エネとしては、デシカント空調を取り入れて、温度と湿度を個別にコントロールして、室内環境の快適性を保ちながら省エネルギーも実現しています。
実証研究としては、太陽光発電で作った直流の電気を交流に変換せずに使用する直流給電LEDなどにも取り組み、エネルギーを上手に使い、これらの設備を総合管理するエネルギーマネジメントシステムにより効率的なエネルギー管理を行っています。
平成25年(2013年)までの実証事業として、CO2排出量の平成22年(2010年)比で24%削減の目標に対して、約26%の削減をしております。スマートキャンパス部門の事務局の施設部が行っているのは、省エネ関係で省エネ積立金制度を利用した高効率空調設備やLED照明設備などの省エネ設備への更新などによって、国が目指す2050年カーボンニュートラル脱炭素社会の実現に向けてさらなるCO2排出量削減、エネルギー使用量削減を進めるための環境目標を実現していきたいと思っています。

最後に「SDGs-ESD部門」と「環境報告書部門」について、センター長でありながら部門長でもありますので、私から説明を致します。

「SDGs-ESD部門」は、2021年度から新しく発足された部門です。三重大学は、ESD(持続可能な開発のための教育)と持続可能な開発目標(SDGs)を積極的に取り組んでいましたが、組織的なシステムとして位置づけていなかったので、その両方の戦略的シナジー効果を期待して「SDGs-ESD部門」を立ち上げました。大学内の各組織との連携はもちろんのこと、三重県、政府、国連などの国内外のステークホルダーとの連携を図ることで、三重大学にとって、ローカルとグローバルとの良い循環を創ることが戦略の1つです。
三重大学の環境・SDGs方針にも、伊藤学長から、カーボンニュートラル社会の形成に向けて、教育・研究・社会貢献・業務運営に取り組んで行くことが明記されているので、その活動と成果の見える化を図る役割を担うのが、SDGs-ESD部門になります。伊藤学長の発言のように、7,000人以上いる学生(学部生、大学院生、留学生)が主役になっていく方法の一つとして、「2030年のSDGs達成に向けた三重大学のあるべき姿のアイデア」を募集しました。5月までの募集に15件の応募があり、今日の座談会に参加している水間さんが最優秀賞に輝きました。水間さんのアイデアは、「SDGs目標4 質の高い教育をみんなに」をテーマとしており、後ほど、水間さんからその内容について聞かせていただきますので期待してください。三重大学が「SDGs先進大学」としてトップランナーとなるべく、大学の教職員と学生が一丸となって取り組む戦略を立てるのは、「SDGs-ESD部門」の大変重要な役割となります。
「環境報告書部門」は、国際環境教育研究センターのセンター長と各部門長をメンバーとし、9月30日までに「三重大学環境・SDGs報告書2021」を作成し、公表することが主な役割となります。「三重大学環境・SDGs報告書2021」は、これまでの環境報告書から、環境・SDGs報告書に名称を変えることで、SDGs先進三重大学をより積極的にアピールできる有効なツールとして期待しています。三重大学の教育・研究・社会貢献・業務運営の充実した内容からなる「三重大学環境・SDGs報告書2021」は、Web版によってペーパーレス化を図り、概要版は、日本語と英語を並記して作成し、国内外へ公表する予定であります。
特に、11月に、イギリス・グラスゴーで開催される気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に、私と学生3名が参加する予定で、COP26の場で「三重大学環境・SDGs報告書2021」のWeb版と和英の概要版を用いて、三重大学の環境とSDGsへの取り組みを世界へ積極的にアピールしたいと思っています。

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