環境座談会 オンライン授業・対面授業について

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事務局から【資料2】【資料3】【資料4】を説明

【資料2】「大学設置基準」(昭和31年10月22日) 【資料3】「遠隔授業等の実施に係る留意点および実習等の授業の弾力的な取り扱い等について」
(令和2年5月1日付 文部科学省通知)
【資料4】「三重大学カリキュラムポリシー」
 
 
梅川

ありがとうございます。授業というのは基本的に対面で行うことを想定して,オンラインでの実施は有事における弾力的な措置であったこと,そうした授業の実施によって三重大学の特色であるPBLPloblem-Based Learningの頭文字からPBLといいますが,各々の課題に対して,学生が小グループに分かれ,主体的にプロジェクトを遂行する力をつけることを目的とした教育方法のことです。 などが有効に行えていたかということが課題であるという説明だったかと思います。
こうしたところにつきまして,授業を受けている学生さん,大向さんはどのような考えをお持ちでしょうか。

大向

はい,文系の視点となりますが,オンライン授業になったことによって学習に大きな影響が出ているかと問われますとそうではない部分が大きいように思います。講義を受けてそれを自分のものにするっていう意味ではオンラインでも対面でもそれほど差は出ないかと。
ただ,それは授業を受ける個人の気持ちの持ち方だと思っていて,オンラインだと心が折れちゃうとか,そういう人には対面で得られる知識量よりは幾分下がってしまうのではないかとも考えています。そういったところにはケアが必要ですね。
結局は個人個人の考え方によって変わってしまう部分でもあるので評価は難しいです。
あと,PBLに関してなんですが,僕は昨年に教養教育の英語特別プログラムに参加させて頂いたんですけど,そういった英語の授業とかアクティブラーニングとかっていう授業には遠隔は向かないのかなって思ってしまいますね。やっぱりああいう英語の授業なんかは人と人とのコミュニケーション,ペアワークとかグループワークとかを通して自分の能力を上げていくっていう面が大きかったですし,それは今の自分にもつながっているのでそこはオンラインでは実現しきれない部分が大きいと思います。
教職員の方も工夫していらっしゃるので実態はわからないですけれど,もしかしたら今年の受講生は得るものが少なくなっちゃうかもしれないかなと。
そういう授業に関しては対面での実施を望む学生が多いんじゃないかなと思っています。

梅川

ありがとうございます。それに対して授業を行う側の冨本副学長はいかがでしょうか。

冨本

私はこの座談会の直前までオンラインの授業をやってきたところなんですけど,タイトルが神経診断学というものでありまして,どうやって患者さんを診察して診断をつけるかという,そういうやり方を教える授業になります。
患者さんの動画などを示して,こういう症状があったらここの神経が壊れていますよという具体例を示して最後に演習問題を課す,そういう授業だったんです。
教育ですから,やっぱり学生さんにはできるだけ考えてほしいと思ってオンラインの向こう側にいるはずの百十何人かの受講者に問いかけるわけなんですが顔が見えないんです。問いかけをしても基本的に声は返ってこないんですね。画面越しに〇とか✕とかは返してくれるんですが。
同時性というか双方向性のある授業というのが本当の教育だとも思っておりまして,オンラインではやっぱりそういったところに少し制限があり,自分の感覚では伝わる部分が7割くらいかなと思っています。
そこをどうやって埋めたらいいのかなといろいろ工夫はしているんですが,難しいなというのが実感ですね。

梅川

なるほど。今は冨本副学長に一教員としての感想を頂きましたけれども,文系の一教員としての鈴木先生のご意見もお聞かせ頂けますでしょうか。

鈴木

教育学部の専門科目で一つ遠隔の講義をさせて頂きまして,また教養教育でアクティブラーニング形式の授業も行っておりました。それぞれに感想はありますけども,特にアクティブラーニング形式の授業での感想を述べさせて頂きます。
先ほど大向さんはちょっと向かないんじゃないかというお話をしてくださったので学生さんとは少し違う感覚となるのかもしれません。
ちなみに授業は,ピアサポート実践という名前で,学生さんに自分達でできる学生支援を企画してもらってそれを実際に実践してもらうという内容で行いました。
今回はオンライン授業の中で学生さんたちがZoomアメリカのZoom Video Communications社が提供するインターネットを通じてコミュニケーションも行うアプリケーション(ツール)です。遠隔地にいる複数人が,Webカメラや音声,チャットなどのコミュニケーションを行う,オンライン・ミーティングのツールの名称です。 上で議論をして,最終的にはオンラインを使ったサークル紹介の企画や動画配信などを学生さん自身でやってくださったというかたちで完結したんですけど,その様子を見ていると,できるかできないかでいうとわりとできるんだなという感じはありました。
ただいつもと違うなと感じたのは,過集中っていうんですかね,集中しすぎるっていうか,ガヤガヤとした空気感ではないので結論に早くたどり着こうとするあまりに,私自身もその空気に影響されて,受講生の子たちが十分にディスカッションを深められないままに進めてしまった部分もあったように感じていました。
画面上で顔を向かい合わせて話し合うってこと自体がいつもと違うことなので,ストレスというか常にみんなの顔を見ながら(あるいは見られながら)いるという状態で,ある種の緊張感がそこにあるのかなと思っていまして,そうするとこの状況から早く解消されたいみたいな意識が働くのか,結論を急ぐ形でみんなの意識が集中していってしまい,ディスカッションとしてあまり議論が深まらない。
だから,やれるかやれないかでいうと,受講生の子たちも頑張ってくれたので,確かに結果的に一定の成果にはつながっていったんですけれど,いつものようにガヤガヤしながらああでもないこうでもないとディスカッションして徐々に一つの結論を紡ぎ出していくような,そういった体験を授業の中で十分にさせてあげることができたかっていうとその辺は濾過されてしまったというか変な意味ですっきりしてしまったというような印象を持ちました。
そういった意味では,直接対面して話し合うに越したことはないなという感じは授業の中で思っていました。

梅川

なるほど過集中ですか。授業での様子をお話し頂いたわけですけれど,会議をオンラインで開催する際なんかでも殺気だったり結論を急いでしまったりだったということが確かにあったかもしれませんね。
香川さんはいかがですか。

香川

先ほどからオンラインとかフィードバックとかの話が出ているので大向君と意見が被るかもしれませんけど,思ったことを少しだけ。
先生が画面の前で授業をしていて「わかった?」とか「質問がある人いる?」とかって聞いてくれるんですけど,オンラインでってなると,自分が喋れば全員に明確に聞こえてしまうとかアクションを起こせばやっぱりそれが全員に明確に見えてしまうってところがちょっと恥ずかしいというか気後れしてしまうところになります。
逆に,オンラインであればMoodleインターネット上で,授業用のウェブページを作るためのソフト。
eラーニングなどの情報技術を用いて行う学習に用いられ,本学では公式のeラーニングシステムとして授業のためのグループウェア・コミュニティツールとして活用している。
を介して授業で解らなかったことを質問しましょうとしてくれる先生方がいて助かっている部分もあります。
そういった対応は対面授業の時にも紙に記入するというかたちで実施されてはいたんですけど,実際は次の授業の教室移動なんかに追われて機能していなかったことが多いです。
オンラインであれば落ち着いて時間を気にせず質問や意見を提出することができ,そうした質問への回答や授業へのフィードバックが行われやすくなったところが遠隔授業の良い点かなって思います。
授業が対面で行われる方がいいかオンラインがいいかって話は大向君と思うところが同じでした。
大向君は文系なので実験や実習がないって話だったんですが,私は3年の前期に実験があってそれをずっとオンラインで受けていたんですね。
最初,実験をオンラインで実践するのはどうするのかなと思いながら受けていたんですけど,先生方もそこのところをすごく気にしてくださっていて,見やすいように動画を撮ってくれたりとか,例えば目盛り線の細かいところをアップにして編集してくださったりとか画像として認識するにはすごく解りやすかったです。教科書をみながらてんやわんややるよりも先生がゆっくり説明しながら操作してくれる動画を見るので手順を読み込むという点ではすごくよかったんですが,やはり自分の手を動かしていないという点で,研究室に配属されてから実際に機器を使用する際にうまく操作できるのだろうかという不安はすごくたくさん残っていますね。
実験自習を体験したい学生は長期の休み中に大学に来てもいいですよと4月頃に聞いたんですが,感染リスクのこともあって大学に行くのもちょっと怖いなと悩んでいるところです。通学が再開された際には,研究室の院生とか4年の先輩に教えてもらいたいなとも思っています。
実験が終わればレポートを提出することになるんですけど,今は図書館に行けないので参考資料というか何か調べものをしたくても全然調べることができなくて困っていました。
ネットで調べようにも出典のわからない怪しいサイトなどもあってそういったところを参照するわけにもいかないよなと思っているときに,三重大学が提供している電子ブックの eBook Libraryを知りました。
閲覧件数の上限とかがあったかもしれないんですけど,私が利用した時間帯は特に混んでいることもなくスムーズに調べものをすることができたんですね。コロナで大変な面は多々あるんですけど,必要に迫られてこういった電子書籍とかの使い方を憶えられたのはよかったかなって思っています。

梅川

ありがとうございました。たしかに私も当初はオンライン実験はないよなって思っていました。また,私は附属図書館長でもありますので図書館の閉館については大変申し訳なく思っております。電子ブックにつきましては,実はこの時期アクセスフリーにしていましたので利用しやすくなっていたんじゃないかなと思います。学生さんには是非ともこういったシステムを活用して頂きたいと思います。
理系の教員である栗原先生のお立場からはいかがでしょうか。

栗原

私は理科教育講座で地学を担当しているんですけれども,講義系の授業では私が一方的に話すのではなく,以前から学生にもパワーポイントを使った10分程度の発表をしてもらっています。
今回は授業がオンラインになってそういった発表がわりとスムーズに行えるようになったなと感じています。あと,私や発表者の声が確実に受講生に届くこととなった点もよかったなと思っています。
実験も一つ担当しているんですけど,そちらの方はなかなか難しいですね。私は地学の地質学を担当していて,そこでは岩石だとか地層の実物を観察する必要があるんですけれども,そういったフィールドワークの実施がオンラインではできないんです。
それで8月になって例外許可申請を提出し,実際に学生たちと郊外の川に行って地層の観察をしてなんとか実験を終わらせたという感じです。
それとあともう一つ,先ほどもMoodleの話が出ていましたけれど,三重大学のMoodleは非常によく整備された状態になっていて,それを活用することができたので大変助かったということが言えますね。

梅川

やはり地質学などの自然を観察するものにはリアルな実習が必要だとは思いますね。
三重大学の学生は全員がノートパソコンを必携することになっていますが,オンライン授業の実施で生協さんの方にも何かいつもと違ったことが起こっているのでしょうか。

山本

パソコンの必携化が今年で3年目ということもあり,このコロナ禍でのオンライン授業がスムーズに行える環境が整っていたことはよかったなと思っているところです。
先生がおっしゃるとおり,コロナ禍の影響でパソコンの使い方や使用頻度が変わったんじゃないかと思っています。学生のお二方も同じことを思われているかもしれませんが,オンライン授業が始まる際にはZoomの接続方法を始めパソコンの操作についての質問が生協にもたくさん寄せられて,それに対するサポートが集中したように聞いています。オンライン授業が進んでいく中で気になったことといえば,意外にも紙の消費が増えたなということです。 オンライン授業では,講義動画をパソコンの画面で開いていますので,先生方から提供される授業の資料は,画面上ではなくプリントアウトした紙で見る学生が多いようです。
オンライン授業によって通学に係る交通費は掛からなくなったけど印刷に係る費用は嵩んだ,そういった話も聞こえてきています。 一方で,タッチペンを使ってパソコン上でノートテイクをするような,完全にデジタルに移行されている学生さんもいらして,このあたりのノウハウや経験が友達同士で,あるいは先輩から後輩へつながっていけば,学習の仕方も進化していくのではないかと思いました。学習スタイルのいろいろな違いや可能性みたいなものが見え隠れしたこの半期だったなと感じています。

梅川

ありがとうございました。学生のアンケートを見てもインク代がすごいことになっているというような書き込みがありました。
学長はいかがでしょうか。

駒田

いろいろな意見が聞けてよかったなと思います。遠隔授業,オンライン授業の良い点や悪い点,あるいは向いている授業やそうでない授業というのは皆さんが仰るとおりだと思いました。
多様な授業や教育が行われているということを踏まえて,今後は大学としてどういう対応をしなければならないかということを考えていかなければいかないなと感じました。
そうしたときに,新しい対応に際して大学教員の資質がそれに見合ったものとなっているかというところが少し気になっています。
二人の学生さんからはそういった話はありませんでしたが,オンライン授業が苦手な先生も一定程度はみえるわけで,そういったところにも改善の余地があるなとみています。
もう一点,教育というのは何を学んだかというインプットだけでは不十分で,それによるしっかりとしたアウトカムがあるのか,いわゆるどういったことができるようになったとかどういった資質が備わったかということが大事なんだと思っています。
手にした知識っていうのは古くなりますから,それを理解して応用し,いろいろな問題を解決していくっていう能力も教育では育成しなければならない内容であるので,それらが果たしてオンライン授業で,あるいはこれから考える新しい形式の授業で養うことができるかっていうような課題があるんじゃないかと考えています。
新しい形式の授業をどうしましょうかといった議論をするときに,一つの案ではありますが,教員と学生がタッグを組んでタスクフォース組織の内部で,通常の業務とは別に,緊急性の高い問題の解決などを行うことを目的に構成された組織のことです。本年度の報告書の記事では,「教員と学生がタッグを組んでタスクフォースとなり」とは,教員と学生がタッグを組んで新しい形式の授業について最善策を考える組織を作るという意味になります。 となり,皆でどういう授業をやるべきかってことを話し合うことがあってもいいんじゃないかとも思います。一方的に教員が考えるものではなくて,授業のあり方としてはそうあるべきではないのかと考えています。
ここで一つ学生さんに質問があります!
大学は今,オンラインの授業がメインになっていますが,小学校,中学校,高校は対面で教育を行っていますよね。こういった現状をどう思われますか?
おかしいやろと感じるのが普通かと思うんですが,学生の皆さんは納得しているんですかね。
高校までの教育と大学のそれとの違いのようなものを感じているのであればそれを教えてほしいと思います。
同じであれば大学も対面授業をするべきですからね。
一方で,我々が対面授業を再開する場合には3密を避けるところに課題があるといえばあるんです。100名教室に50名しか入らないとなると教室が倍要るんですね。ですので,6月の概算要求では担当者に教室を倍に増やしてって冗談ながらに伝えたんですがそれは当然のことながら無理な話でした。
今あるホールなどを教室に転用するにもネット環境などの点で問題があるんですね。
いろいろと模索はしていますが難しいです。
ですが,オンラインよりも対面の授業の方がいい面が多い,いいアウトカムが導き出せると思っていますので,そちらを優先したいと思っています。
学生達も多様なので,香川さんのように登校するのが怖いって感じている人達を無理やり大学に引っ張り出すわけにもいきません。その場合は対面とオンラインのハイブリット授業をしなければならない。それをやろうと思ってもハードの面が整っていない。これには大学の責任もあるのでしょう。
新しい教育方法を考えていくうえで,まずは高校までの教育と大学の講義の違いについて学生さんの考えているところをお聞かせ頂けるとありがたいです。

梅川

それでは学生の香川さんに伺いましょうか。

香川

友達とオンラインやチャットで「高校生や中学生は登校してるよね」みたいな話になることはままあって,大学生は何でダメなんだろという議論になります。私個人としての意見なんですけど,大学生と高校生以下は違うかなと思っています。
その理由として考えているのは,大学生の行動範囲の広さです。大学生は授業の時だけ学校に来てその他の時間はバイトしたりサークル活動をしたり,あるいはどこかに旅行したりしてるじゃないですか。で,アルバイトをしてることもあって持っているお金も高校生までとは違うし結構大人に近い感覚なんですね。そうした行動範囲の広さから明らかに感染リスクが高いし,感染した際にはそれを広げてしまう媒体にもなり得ると思うんです。だから高校までの教育とはちがったオンライン授業も致し方ないのかなと考えています。 私は実家から大学に通っているんですが,感染リスクの高い大学から家にウイルスを持ち込んでしまうことを考えるととても心配になります。私や妹は若いから重症化する可能性は低いのかもしれませんが,それがおじいちゃんやおばあちゃんに感染してしまったら辛いので。
私個人の意見としては大学と高校生以下は分けて考えるべきだし,大学がしかっりとした対策をとるまではオンライン授業を続けて感染が広がらないようにした方がいいのではないかと考えています。でも,友達の中では少数意見になるので,こんな風に思っている学生の割合は少ないかもしれません。

駒田

大向さんも同じような考えですか。

大向

確かによく聞かれるのは「大学生は行動範囲が広い」って理由です。ですけど僕はそれだけではないと思うんですよね。
一番は情報機器の保有の格差だと思うんです。大学生は基本的にパソコンを持っている,ないしは大学でパソコンを借りることができるのでオンライン授業でもOKって環境がある程度整っています。対して高校生や中学生,あるいは小学生の場合には家庭でのパソコン普及状況はまちまちでしょうし,そうした環境によってオンライン授業を受けることのできる体制が不十分だといえるんじゃないでしょうか。
状況がまちまちとなっている点で高校以下が対面授業となるのは仕方がないということも一つですし,あと,そういう整備をするのにはどうしてもまとまった財源が必要になると思うんですよ。
そういった点で大学であれば困窮した学生になにかしらの支援を行うことができると思うんですけど,例えば市立の学校とかで市から各家庭に向けてそうした支援ができるかって言われたらそれも難しいように思うので,そうした面で一律的な対応は難しいかと。だから僕はある程度,大学と高校以下の授業スタイルに違いがあっても仕方がないのかなと納得しています。

駒田

オンライン授業にも肯定的な意見があるということに安心しましたけれども,一方で入学したばかりの1年生のことがやっぱり気になりますね。2年生以上の学生さんはそれだけ成熟していろいろと大学のことを理解してくださっていますが,1年生の方々は入学以来一度も大学に来たことがないっていうところですごく不安に思っているはずなんですよね。そういった不安を解消したいと思うんですが,その解決策が見つからないのが現状なので,もし学生さんたちにいいアイデアがあるようでしたらそれを大学にお寄せ頂けると非常にありがたい,こう思っております。

梅川

ありがとうございます。オンライン授業を始めるにあたっては教員サイドでかなりの議論をしたんですけど,学生さんお二人にお話を聞くと,ある意味教員よりも現状を理解しているなという気がしますね。 司会の私の意見も少しだけ。私もオンライン授業を行っておりまして,1年生の授業で273名かな,そういった学生さんたちに向かって真っ暗な画面に喋るのはなかなか辛いものがありました。その後に授業の感想をもらったんですけど,その中に二つ心に響く意見がありました。 私は学部長時代に高校へ出前授業に行ったことがありまして,そのときの生徒が三重大学の学生となってそのオンライン授業を受けていてくれたんですね。高校の時の出前授業は解らなかったけど,オンラインで受けた授業は解りやすかったと二人の学生が意見をくれました。オンラインであっても対面と同じような授業が可能だと感じた次第です。 時間も押し迫ってきたところですが,最後にコロナ禍の環境問題といいましょうか,環境に関するニューノーマル,新しい考え方をご紹介したのちにそれについての皆さんのご意見を伺いたいと思います。 奥山アドバイザー,よろしくお願いします。

奥山

(「グリーンリカバリー新型コロナウイルス感染症の流行により低迷する世界経済の再起を図る際に,脱炭素社会や生物多様性の保全など環境問題への取り組みも経済復興と合わせて行おうとする政策のことです。特に欧州を中心に新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興にあたり,グリーンリカバリーの考え方が広まっています。」 「グリーントランジション」 「サーキュラーエコノミー」について説明)

梅川

よろしいでしょうか。ちょっと難しい問題かもしれないんですけれども,それぞれの立場からですね,アフターコロナの環境問題をどういう風に考えて行ったらいいかということを本日ご出席の皆さんからお一人ずつお伺いし,最後に学長からまとめて頂ければと思います。
それでは最初に,この大変な状況を危機管理担当の立場でいろいろとご尽力頂いている冨本副学長からお願い致します。

冨本

このコロナ禍については,否応なく対応せざるを得ない状況に追い込まれてしまったわけですが,転んでもただでは起きないといいましょうか,せっかくこうした困難な状況を乗り越えつつあるわけですから,この経験を無駄にしてはもったいないとこういう風に思うわけです。やはりこの経験を未来につなげていくことが必要だと私は思っています。
具体的に言えば,私も平時には週に3回くらい東京に出張することがあったんです。ところがそれがオンライン会議となったとき,意外にもあっさり用事が済んでしまうんですね。要件はこんなにも簡単なことだったんだと。
それから行動指針の管理レベルが上がってきたときなんですが,テレワークの実施目標を4割とかに設定するとですね,実際に在宅勤務を行うといろんなことが見えてきました。私自身も家内に熱が出たことがございまして,実際に1週間ほどのテレワークを経験しました。そうするとですね,意外とこれができるものなんですね。逆にテレワークをすることによって効率化する部分もあるということにも気が付きました。
今回は外圧によって生活のあり方を変えざるを得なかったところですが,せっかく変えたので効率化が図られた部分についてはそのままでいいのかなとも思います。全部をそのままにするというのではありません。コロナ対策と経済の復興の両立といったことを考えると,やっぱりそういったオンラインだとかテレワークの良い部分をこれからの生活のあり方に活かしていくべきなのかなと。無駄な資源を使わない,効率的な経済を構築するという意味では非常にいい教訓になったのかなと,私自身はそう思っております。

梅川

ありがとうございました。効率の良いオンライン会議などが省資源化につながるというお話でありました。
栗原先生はいかがでしょうか。

栗原

私も冨本副学長と同意見で,今回はいろいろとオンライン講義などを経験して今までになかった授業の手法を手にすることができました。今後はオンラインでできる会議などは積極的にそちらに切り替えて,そうしたことによって省資源化を,持続可能性社会の構築を目指していけたらいいんじゃないかと考えています。

梅川

ありがとうございます。新しい会議の手法が持続可能な社会の構築につながるといったご意見を頂きました。
次は鈴木先生にお願い致します。

鈴木

環境のことに関しては本当に不勉強で恐縮なんですが,経済が落ち込んでいるっていうことに関しては臨床心理学の人間としてかなり気にしているところがあります。新型コロナに感染して亡くなる人よりも経済が落ち込むことが原因で自殺されてしまう方の数の方が増えるのではないかというような議論も出ていたりするわけですよね。
そういった意味でやっぱり経済をいかにして立て直していくかっていうことが当面今後の社会においては重要で,先ほどはグリーンリカバリーっていうお話もされましたが,環境の悪化を抑えながらも経済をちゃんと復興できるといいのかなと思います。私自身も今後はこういったところをいろいろと勉強したいなと考えています。
さらに言うと,環境を考えた生活となるとどうしても我慢を強いられる部分があるように思うのですが,現状のコロナ禍の中で既にみんないろいろな我慢を強いられているところなので,我慢をしなくともこういうやり方をすれば環境にも優しいし生活の便利さも失わずに済むよっていうようなことがいろいろと議論されて膨らんでいくといいなって考えています。
私自身の思いはそんな感じです。

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