環境座談会 新型コロナ禍に関する三重大学の対応

  • 3 すべての人に健康と福祉を

事務局から【資料1】を説明

【資料1】「新型コロナ禍に関する三重大学の対応」に係るクロノロジー
 
 
梅川

ありがとうございました。刻々と状況は変わってきたわけですが,新型コロナウイルスの登場で我々の生活は一変したわけです。とりわけキャンパスに学生がいない状況というのは70年を超える大学の歴史の中でも最大級の有事だったのではないかと考えております。
まずは今禍の襲来で恐怖を感じたこと,困ったこと,何でも結構ですのでどなたか発言頂けますでしょうか。

冨本

先ほど事務局からコロナ禍に対する顛末をご説明頂いたわけですが,危機管理担当の立場からその行間を補足したいと思います。自己紹介で申し遅れましたが,私は医学部の脳神経内科に所属しております。私どもの病院では,SARSが流行した時に大騒ぎをして体制を整備したという経緯がありまして,今回のウイルスも武漢で発症した時点では対応は比較的容易なのではないかと考えておりました。まもなくして日本に寄港したクルーズ船の乗員に感染者が確認されたという事態となった時にいよいよ対岸の火事ではなくなってきたかといった認識となり,教育研究評議会において緊急対策本部会議の設置が承認されることとなりました。
それ以降,行動の基本計画,それから行動指針というように状況の変化に応じて手を打ってきました。
特にゴールデンウィーク前に感染の拡大があるのではないかという情報が寄せられたことで,かなり急いで行動指針のレベル設定を行いました。その後,そのレベルは2まで上がりました。
しかしながら第一波は三重県にほとんど波及せずにすんだものですから,そろそろ元の生活に戻れるものかと8月の初めには対応を0.5として課外活動なども再開したと記憶しています。
今にしてみればこのときにもう少し慎重であるべきだったかなとも思います。
第一波はゴールデンウィークでしたし第二波は夏休みでした。少し心がウキウキするような状況で拡大するというウイルスはまったく困ったものです。
少なくともワクチンができるまではこの厄介なウイルスと付き合っていかざるを得ないと思いますので,どうやったら経済活動を再開できるのか,我々医者にとっては臨床と研究と教育をどうやって維持できるのか,そんなことを毎日考えている次第でございます。

梅川

ありがとうございました。危機管理担当副学長のお立場からの貴重なお話を頂きましたが,確かに外側からは大学の対応がどういう過程で決められたかというところは見えにくい部分だったかもしれません。
学生の立場からはこういった行動制限が課せられた状況をどう見ていたのか。
香川さん,いかがでしたか。

香川

私は三重県内に住んでいまして,オンライン授業のないときはいわゆるエッセンシャルワークのアルバイトに出ていました。
私のバイト先は対面で食料品を販売しているところなんですが,県内で感染者が発生し始めたころには周りが殺気立って来るのを感じていました。私もお客さんを介して感染してしまうかもしれないとすごく怖い思いをして働いていた覚えがあります。周りにも同じく生活に欠かせない仕事をアルバイトにしている友達がおり,これ以上感染が拡大してもこの仕事を続けるべきかと共に悩みながら生活していました。

梅川

ありがとうございます。とても具体的なお話で私もつい聞き入ってしまいました。
大向さんはいかがでしたか。

大向

そうですね,課題ってことでお話しさせて頂くんですけど,生活全体がオンラインになっていく過程を経る中で一番に感じたところはやはり心理的な部分だったかと思います。去年までは対面で友達と一緒に授業を受けるとかご飯を食べるとかいうことが日常だったんですけど,そういった何でもないことが非常に楽しかったんだなということが思い返されます。このことは正直とても大きかったですし,それが勉強を続けるモチベーションだった部分もあります。なので戸惑いは大きかったです。
バイト先の塾も休みとなり,5月6月には課外活動もできなくなってほとんど友達と会うこともなくなり孤独感を感じることもありました。
7月に入って規制が緩和された中で,環境ISO学生委員会の友達と短い時間でしたが活動を再開できたときには楽しかったですし,ちょっとずつでいいから元の生活に戻したいなと強く思いましたね。
今は第二波もピークアウトしている状態かと思います。油断はできないですけど,少しずつウィズコロナの生活ってものを進めていけば学生や教職員のストレス解消になるんじゃないかと思っています。

梅川

教職員のことも気にかけて頂きありがとうございます。
栗原先生はいかがですか。

栗原

そうですね。私は一年生の担当ではないんですけれども,担当している先生に伺ったところではやはり新入生は一度も教員や同級生と会う機会がなくて不安を憶える学生が多いと聞いています。

駒田

ちょっといいですかね。
皆さんはこの新型コロナウイルス感染症が指定感染症となっていることをどう捉えていますか。
私はこの感染症が指定感染症に指定されていることを非常に重く受け止めています。そして,事実上,第1類感染症であるエボラ出血熱やペストなどと同等の危険度があるものとして取り扱われています。そういった感染力や重症度が極めて高い危険な感染症だと政府が指定したことによって国民には非常に大きい制約がかかっているわけです。だって一見して健康で症状のない人でも隔離されて入院したりしているわけですからね。そういう感染症になってしまっているんですよね。
そのことがおよぼす影響っていうのは計り知れないですし,そのために学校を休校にしたりしなくてはいけなくなっている。休校措置などの良し悪しは別として,法律で大臣が指定したという事実から全てが始まっているということを含んで頂いて,その規定を守らなければならない,あるいは三重大学を護らなければならないということを考えてみてください。
「ペストとかエボラ出血熱が流行っています」と聞くと皆が慌てますが,「新型コロナウイルスに感染しても意外に元気だな」などとなると,感染に対する危機感と指定感染症となっているという事実にギャップがあって感情的に理解できないような状況になっているんじゃないかと思います。
香川さんは先ほど怖い感染症と仰っていました。そういう感覚の人もいれば,そうではないという人もいます。いずれにしても国が新型コロナウイルス感染症を指定感染症としている事実がありますので,大学としてはそれに対応しなければなりません。
一人でも感染すれば周りの人間も検査しなければなりませんし,感染者は元気であっても隔離しなければなりません。またその方の経過をフォローしなければなりません。
こういったことが組織体としての大学が対策を考える場合の大きなファクターとなっています。
そうした中であっても許される範囲内で少しずつでも組織を前に進めたい。大学の構成員からもそういったことに関するアイデアをお聞かせ頂きたいというのが私の気持ちであります。

梅川

ありがとうございました。引き続き,学生さんからいろいろな相談を受けている鈴木先生はいかが感じておられるかお聞かせ頂けますでしょうか。

鈴木

はい,ありがとうございます。今ほど学長が言われたお話はすごく大きなことだと思います。私自身もこのことについていろいろと考えておりましたし,不満も感じておりました。
学生の立場から見たときにもっとこうするべきなんじゃないかといろいろと思うところはあったんですが,やはり学長が言われるとおりで,そういった事実があるかぎり三重大学だけが別のことをするわけにはいかないという部分もあるわけで。そういう局面で執行部の先生方が難しいハンドリングをされていたこと,その点に関してはすごく感謝している次第です。
相談室の状況からしますと,今年はそもそも学生さんがキャンパスにいないということもあって4月の相談数は激減していました。例年ですと,履修の質問というようなレベルの相談ではあるんですが,いろいろなことを訊きに相談室を訪れてくれたんですが,今年は200件くらいのマイナスになったでしょうか。
5月くらいから授業が始まったということもあっていろいろな相談が寄せられるようになりました。やはりオンライン授業に関する相談とか人に会えないことに関する相談が増えてきて,5月以降は延べ件数にしても実人数にしても昨年度よりも相談件数が多いという状況となりました。
現時点では電話やメール,ZoomアメリカのZoom Video Communications社が提供するインターネットを通じてコミュニケーションも行うアプリケーション(ツール)です。遠隔地にいる複数人が,Webカメラや音声,チャットなどのコミュニケーションを行う,オンライン・ミーティングのツールの名称です。 などのオンラインでの相談というかたちですが,それでも昨年よりも相談件数が多くなっているという状況ですので,やっぱり学生さんにはストレスが溜まっているんだろうなというような感じは受けています。
お話を聞いていると,オンライン授業に対する質問から,ここ最近は孤独感に対する不安といった相談に内容が変わってきている傾向にあるような気がしています。
先ほどどなたかが仰っていましたけど,1年生は入学してから誰ともかかわっていない,下宿している方なんかは実家に戻ることもできなくてこの半年ずっと一人でいるような学生もいっぱいいるんですよね。
そういう学生さんから不安が寄せられることもありますし,親御さんが心配して相談室に連絡してくるってこともありました。我々としても「時々お子さんに連絡して頂きたい」といったことしか言えなくて,非常に心苦しい思いをしているというところがあります。
いずれにしても,学生の相談を受けている立場から申しますと,学生さんたちの間で人間関係のつながりがなくなっているというか,物理的なものだけでなく心理的なものも分断されちゃっているという状況があってかなり心配をしております。
新型コロナウイルスに関する相談はほとんどないんですが,人とつながれないことによって気持ちが離れてしまう,孤独感に由来するような相談が夏休みに入っても続いているので我々としてもかなり心配しているという状況にあります。

梅川

ありがとうございました。学生が登校していないという点では生協さんもいろいろ大変かとは思いますが,山本専務からその辺りのお話を頂いてもよろしいでしょうか。

山本

はい,生協からはコロナ禍の中で運営を続けてきて感じていることを少しお話させて頂こうと思います。
皆さんが仰ったお話しはどれも本当に共感致します。3月あたりからこの問題が大きく広がっていった中で,生協が行っている新生活準備のサポート,とくにたくさんの新入生が参加頂いている歓迎企画が一切なくなり,例年行っている仲間づくりの機会がつくれなかったことはすごく残念に思っています。生協にかぎらず,いろいろなクラブやサークル,委員会などが,同じように組織維持の点で大変な状況にあるのではないかと思います。
お店の関係でいえば,皆さんご存知のとおり大学生協は学内に店舗を構えていますので,構内に学生の皆さんがいらっしゃらなくなれば当然ご利用もなくなる立地にあります。
そういう中で生協はこの間ずっと,学生の皆さんの学びを支えたいという思いで事業を展開してきました。
学びを支えたいという思いと同時に,安全に生活を送れることにも拘りたい。これについては従業員も「感染したらどうしよう」「感染させたらどうしよう」という不安の中で営業を続けていますし,学生の皆さんにもそういった不安を抱えながら生協を利用頂いておりますので,従業員,利用者のどちらにとっても安全であることを第一にして営業を続けることが生協の責務だと思っています。
また,利用者が激減する中でどうやって経営を維持していくかということも,事業体としては大事な視点です。
まとめていうと,学生の学びも支えたいし皆の安全も確保したい,また事業も維持したい,この3つをどうやってバランスさせながら運営していくかを課題として持ちながら,手探りで進めてきているところです。
このような状況はこれからも続くだろうと思っていて,コロナ前に比べ随分と変わってきている皆さんの生活様式に合わせて,いろんな商品やサービスを考えていかなくてはいけないなと思っています。

梅川

ありがとうございました。厳しい状況の中で経営を続けていくのは相当に大変なのではないかとお察し致します。
ここで,先ほどから度々話題となっておりました遠隔授業について少し皆さんのお考えをお伺いしたいと思います。
意見交換に先立ちまして,事務局から遠隔授業に関する規程や通知について報告させて頂きます。

TOP