令和5年度は、本学を卒業した先輩方の様子を特集として紹介します。
 国立大学は、平成16年4月から法人化し、国立大学法人となったことに伴い、大学の自主性を尊重するようになりました。本学では環境先進大学を目指すことを掲げて、環境マインドを育成することに注力し学生を輩出してきました。
 環境・SDGs報告書2023では、環境マインドを持った卒業生が、社会で活躍している様子を知っていただくことを目的に特集を編成しました。
 本報告書では、4名の卒業生に現在の活動の様子を取材していますが、その内2名は、在学中に環境ISO学生委員会として積極的に環境活動をしていた方です。
 本学で学び卒業した後に、社会人として活躍している様子が伺えます。

卒業生の活動②

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 5 ジェンダー平等を実現しよう
  • 7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 8 働きがいも経済成長も
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 14 海の豊かさを守ろう
  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

<大栄環境株式会社伊賀リサイクルセンター業務課勤務>髙田 眞穂
(令和元年度卒業 生物資源学研究科 資源循環学専攻)

 廃棄物処理業は、私たちが生活をする中で必要不可欠な社会インフラの一つですが、ネガティブな印象が強い業界です。しかし実際は、廃棄物を不要なものではなく新しい価値を生み出す資源の一つとして考える、資源循環と環境に配慮した業種です。廃棄物の中から資源化できるものを再利用し、再資源化できないものはエネルギー源として利用することで資源循環を進めています。
 また、大栄環境グループは、人々の暮らしや地球環境を守るため、森林保全や災害支援、DX推進などのさまざまな社会課題解決に向けた取り組みを進めるほか、環境への理解を深めていただくためにイベント開催や見学にも力をいれています。
 大栄環境株式会社伊賀リサイクルセンターは、メタン発酵(メタンガス発電)施設と堆肥化施設から成る複合施設で、それぞれ令和4年11月1日と令和4年10月1日から稼働を開始しています。これらの施設は食品廃棄物の資源循環システム構築を目的とした施設です。

大栄環境株式会社伊賀リサイクルセンター(R4.8.24)

大栄環境株式会社伊賀リサイクルセンター(R4.8.24)

 メタン発酵施設では肥料化や堆肥化に不向きな液体状や硬い食品廃棄物を利用し、メタン菌の発酵によりメタンガスを発生させます。このメタンガスを用いて発電することで従来の発電よりもCO₂の発生を抑えることが可能です。

メタン発酵施設

一般家庭の約5,000世帯分の発電量・・・定格発電能力約2,000kW・24h稼働、一般家庭消費電力量2,974kWh/年として
出典:電気事業連合会調べのデータより作成(https://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/japan/)

 堆肥化施設は、食品廃棄物を微生物による発酵により、作物を育てる土の環境を整えるための堆肥を製造します。この堆肥を使用して作った野菜が販売されることで、食品廃棄物の資源循環を構築します。発酵で発生するアンモニアなどの臭気も微生物によって分解されるので、脱臭処理も環境に負荷の少ない施設となっています。

堆肥化施設

 両施設で発生する汚れた水は、水処理施設で処理され厳しい環境分析を経て河川に放流します。プラスチックや紙などの食品以外の廃棄物は、三重中央開発株式会社で固形燃料化や熱エネルギー源として再利用されます。
 私は分析測定から食品廃棄物の資源化を確認する、環境に負荷の少ないエネルギー源生産の業務に携わっています。食品廃棄物を再利用しても有機物が少ない廃棄物ではメタンガスが得られません。またメタン菌も人と同じように偏った栄養バランスや過度な栄養の摂取によって活性が低下し、正常にメタンガスを発生しなくなります。そこで、食品廃棄物に含まれる有機物や阻害物質を測定することでメタンガス生産に寄与できる食品廃棄物を探します。また、さまざまな食品廃棄物が一定に搬入されないため、原料とメタン菌が活動する発酵液は日々変化し続けます。これらを測定することで栄養バランスの偏りと阻害物質の増加だけでなく、メタン菌が問題なく活動をし、メタンガス生成が十分に行われている環境であるかを管理しています。

  • 食品廃棄物の分析測定の様子(R5.7.25)

    食品廃棄物の分析測定の様子(R5.7.25)

  • メタンガス生成の確認の様子(R5.7.26)

    メタンガス生成の確認の様子(R5.7.26)

 大栄環境株式会社伊賀リサイクルセンターは、微生物の力を利用し、廃棄物の再資源化と環境に負荷を与えないエネルギー創造に取り組む施設です。日々さまざまな食品廃棄物を処理する中で、分析業務はメタンガス生成を安定化させ、資源循環システムと環境負荷低減の一助となる業務となっています。

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