熱帯地域における高品質イチゴ生産のための省エネルギー栽培環境制御法の構築

  • 7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう

<地域イノベーション学研究科 地域イノベーション学専攻> 丸山 直樹(教授)

 新興国の経済成長と生活環境の向上には、目を見張るものがあります。かつては、物価が日本の数分の一や一桁低かった国々においても、都市化に伴って物価の上昇とともに高品質の物品、食材が提供されるようになってきました。とくに都市部においては、高品質の食物が日本と同等またはそれ以上の高価格で取り引きされている場合もあります。本研究は、高品質なイチゴを熱帯地域で生産するため、取り扱いの簡易な省エネルギー型空調制御方法を提案することを目的としています。

 この研究は、タイ、チェンマイ大学工学部機械工学科(環境エネルギー研究センター)との共同研究として進められています。本学では、筆者が取り組んできた冷却機の開発から得られた研究成果ならびに研究経験に基づき、新興国でも管理が簡易な省エネルギー型空調制御方法の開発を行い(図1)、チェンマイ大学では、その実証試験に取り組んでいます(図2)。

 イチゴの生産には、栽培環境の管理が重要です。イチゴ栽培には昼夜の温度差が必要で、日本では冬季に温室ハウスを用いて温度差を確保しています。しかしながら、タイでは平均気温が高い上に、北部地域でも昼夜の温度差が約10℃と小さく、自然環境で高品質の栽培を行うことが困難です。このため、日本の適切なイチゴの栽培環境データ(温度、湿度、日射量など)を本学でデータベース化し、熱帯地域での栽培制御に適用することを考えています(図3)。栽培環境の環境制御については、農地でも管理が容易な局所空調制御方法を提案し、その有効性を試験しています。

 タイでは、イチゴに限らず富裕層を中心に高品質の食物が好まれており、高付加価値の果物の生産による農業分野の発展が期待されています。また、本研究の成果は日本とタイ間のみならず、広く世界各国での栽培にも適用できることを望んでいます。

  • 図1 局所空調制御実験

    図1 局所空調制御実験

  • 図2 実証試験(チェンマイ大学)

    図2 実証試験(チェンマイ大学)

  • 図3 イチゴ栽培

    図3 イチゴ栽培

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