3環境・SDGsコミュニケーション
附属小学校の取り組み
- 4 質の高い教育をみんなに
- 11 住み続けられるまちづくりを
- 14 海の豊かさを守ろう
- 15 陸の豊かさも守ろう
附属小学校では、身近な生態系について探究する環境教育を進めています。学校にある池を起点に、身近な生態系や地球環境について学ぶ6年生理科「生物と環境」の授業を紹介します。
複雑かつ難解な生態系について探究する
附属小学校の中庭には人工の池、通称「亀池」があります。その池には、多様な生物が生息していません。かつては鯉や亀が生息していましたが、現在はその面影もありません。6年生が「水中の小さな生物の観察」を通してこの現状に問題意識をもち、亀池をフィールドとして「生物どうしのつながり」を考えました。身近な環境を題材とした学びですが、子供たちは生態系のバランスを保つことの難しさに直面します。教科書では単純化されている「生物と環境」の内容について、学校周辺の生物の相互作用、食物連鎖、外来種の影響、生物の生活史といった観点から、複雑かつ難解な生態系について探究を進めました。
身近な自然環境からスタートする学び
まず初めに、学校周辺で「水中の小さな生物」がいそうなところを求め、校区の探検をしました。地域の方々の協力のもと、田や用水路、川の水を採取し、その水を顕微鏡で観察をしました。生物が豊富にいるのはどのようなところなのか、子供たちは調査を進めました。
校区の生態系を探る(R5.6.15)
採集した水(R5.6.15)
顕微鏡で見たミジンコ(R5.6.16)
顕微鏡で見たミカヅキモ(R5.6.16)
池の水を半分抜いてみた
地域の生態系を調査する中で、子供たちは次第に「亀池の生態系はどのようになっているのか」と問題意識をもつようになりました。そこで、池の水を半分抜いて生物を採集することにしました。
亀池は、池の縁は内側も外側も返しのある構造になっており、内外の連続性や移行帯という視点からすると完全に隔絶された世界になっています。外部に逃げ出しては困る生物を飼うには良い構造になっていますが、自然に生物がやってきて出入りするといった池ではありません。その特徴も、生態系について探究する上で子供が直面する難題となりました。
採集したギンブナ(R5.6.27)
タブレット顕微鏡で観察(R5.6.27)
調査結果から考えられることは何か
亀池で採集した生物は種の同定を行い、それらの「食べる・食べられる」の関係を整理しました。また、地域の自然環境と亀池を比較し、「水と陸の連続性」「流れ」が、豊かな生態系を生み出すポイントではないかと考察を進めました。
考察について議論をする児童(R5.7.3)
授業の板書(R5.7.3)
教育学部 平山 大輔教授による出前授業
亀池の生態系について探究する過程で、子供たちは「専門家の話を聞きたい!」という思いをもつようになりました。子供自らタブレット端末でメールを送り、アポイントを取って教育学部・平山 大輔教授(生態学)に来ていただくことになりました。
子供たちはミクロの世界の生態系が、マクロな世界である地球環境、そして人間生活にまで広がることに気付くことができました。子供たちは終始、食い入るように平山 大輔教授の話を聴いており、時間がオーバーしても質問が絶えないほどの熱中ぶりでした。
児童の感想
- 本当に自分たちの要望で平山 大輔教授に来てもらって嬉しかったです。私たちでは、分らないことや専門的なことをたくさん学べたので、いい授業になったと思いました。特に私が印象に残ったことは、「唯一、完璧な生態系が『地球』だと聞いたこと」でした。46億年前からずっとずっと進化し続けてきた生態系を完璧に再現することはできませんが、亀池を地球に少しでも近づけるために頑張ろうと思います。
- 多様な生態系にしようと思ったら、それに合った環境をつくらなければいけないということが分かりました。生態ピラミッドができあがることはかなり難しく、生物の出入りを可能にする環境が亀池の生物を多種多様にすることにつながることが分かりました。